2018 年 54 巻 7 号 p. 713
生体試料分析は,人々の健康状態や疾病の診断を行う上で必須の技術であり,臨床現場即時検査(point of care testing:POCT)に向けて,その分析法の簡便化が望まれている.この要請に応えた分析機器として,呈色試薬を含有した試験紙であるディップスティックが挙げられる.ディップスティックは,試験紙部分を試料溶液に浸し,その色調変化を観察することで,特定分子の有無の判別に用いられる.また,色調変化の度合いから定量分析も可能であるものの,その定量性には課題があった.
そこで本稿では,このディップスティックを組み込んだマイクロ流体デバイス(=μmオーダーの流路を有するチップ)と,スマートフォンを利用した色調測定システムを構築し,人工尿試料における生体分子分析の定量性を向上させたJalalらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Delanghe J. et al., M. Biochemia. Medica., 24, 89-104(2014).
2) Jalal U. M. et al., Anal. Chem., 89, 13160-13166(2017).