ファルマシア
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自由行動下の動物の深部組織から非侵襲的に発光を検出する技術
福地 守
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2019 年 55 巻 1 号 p. 69

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抄録

酵素(ルシフェラーゼ)と基質(ルシフェリン)の酵素反応により生じる生物発光は,生体動物を用いたin vivoイメージングに応用されている.特に,ホタルルシフェラーゼ(F-Luc)とD-ルシフェリンの組み合わせは,in vivoイメージングのゴールドスタンダードとして,がんや脳科学などの研究領域で利用されている.しかし,D-ルシフェリン自体の組織透過性が悪く血液脳関門も通過しにくい,また,F-LucとD-ルシフェリンの酵素反応により得られる発光は,562nmの黄緑色領域の光であるために生じた発光の組織透過性が悪い,などの欠点があり,F-LucとD-ルシフェリンの組み合わせは,必ずしもin vivoイメージングに最適化されたものではなかった.AkaLumine-HClは,これらの問題を解決するために合成されたルシフェリンアナログである.D-ルシフェリンと比較すると,AkaLumine-HClの生体内での組織透過性はよく,また,F-LucとAkaLumine-HClの酵素反応により得られる発光は,677nmの赤色領域の光であるため,生じた発光の組織透過性も改善された.しかし,D-ルシフェリンと比較すると,AkaLumine-HClでは発光強度が低下する問題があった.今回,Iwanoらは,大腸菌発現系を利用してルシフェラーゼ遺伝子ライブラリーを作成することにより,AkaLumine-HClを基質とする最適なルシフェラーゼ変異体を探索した.最終的に,28アミノ酸が置換されたF-Luc変異体「Akaluc」を同定し,Akaluc/AkaLumine-HClを用いた生物発光イメージング(bioluminescence imaging: BLI)は「AkaBLI」と名付けられた.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Contag C. H., Bachmann M. H., Annu. Rev. Biomed. Eng., 4, 235-260(2002).
2) Kuchimaru T. et al., Nat. Commun., 7, 11856(2016).
3) Iwano S. et al., Science, 359, 935-939(2018).

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© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
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