ファルマシア
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55 巻, 1 号
選択された号の論文の45件中1~45を表示しています
目次
  • 2019 年 55 巻 1 号 p. 2-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    特集:日本もついに本気モード 新時代のオープンイノベーション
    特集にあたって:医薬品産業を取り巻く環境は加速度的に変化しており,新薬を世に出すハードルが一層高くなっている.このような状況下,新薬創出力を強化するためや多様な医療ニーズに対応するため,オープンイノベーションが活発に行われている.産官学や異業種などが基礎研究から社会実装までを一貫して共創する活動が推進されている.本特集号では,アカデミア,企業,公的機関などの観点から,戦略的なオープンイノベーションの重要性,取り組み,組織体制,期待できる効果などを紹介して頂いた.多様なオープンイノベーションが革新的医薬品や革新的医療の成功に結び付くために必要とされること,課題やその解決策に関しても是非考える機会にして頂きたい.
    表紙の説明:オープンイノベーションは,様々な組織や分野が垣根を越えて知識,技術,人財,資金などを結集させ,新しい価値を創造する仕組みである.新しい医薬品や治療という成功へ向かうために,多様なリソースが融合し,分野や組織が有機的につながり,互恵的でより緊密な連携をすることが重要である.
オピニオン
Editor's Eye
話題
話題
話題
話題
話題
話題
話題
話題
  • Jeffrey A. ENCINAS
    2019 年 55 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    オープンイノベーションとは,医薬品業界において,新薬のアイデアや技術の源を積極的に外部化することを表している.これにより,企業の研究開発コストの削減,リスクの分散,成功数を高めるための社内プロジェクト数の拡大を通じて,企業に利益をもたらすことができる.また,その一方で大学などの研究者にとっては,成功時のロイヤリティーを得る,企業の注力疾患の優先づけや戦略に携わる機会を得るなどの利益を享受する.
    本稿では,筆者らの経験を通じて,医薬品業界におけるオープンイノベーションの変遷と今後の展望を紹介したい.
話題
  • 岸本 堅太郎
    2019 年 55 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    日本、欧州の公的保険による医療システム、米国の民間保険中心の医療システム、いずれにおいても、制度の持続可能性を担保する観点から、製品の費用対効果、Valueが問われる時代になっています。特に日本は医療を社会保障として公的に提供しているため、人口構成などを踏まえると、制度の持続可能性と新薬開発のインセンティブを両立するメリハリの効いた薬価制度への変革が求められています。そうした薬価制度改革の動向や新薬開発の確率低下などを踏まえ、求められる製薬企業像の変化を概観し、医師や患者のニーズを踏まえた新たな創薬についての経済産業省の支援策等について紹介する。
話題
  • 安井 潔
    2019 年 55 巻 1 号 p. 47-49
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    塩野義製薬(株)は,「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」を基本方針に掲げ,医療・社会ニーズを捉えた革新的な新薬を一日も早く患者様に届けるために日々研究開発を行っている.最近では,自社で創製した全く新しい作用機作を持つ新規抗インフルエンザ薬であるゾフルーザ®を上市した.現在,開発中の開発品のうち,約70%が当社の研究所から生み出されたものであり,創薬型製薬企業として成長することを宣言している当社にとってこの比率の高さは我々の研究力の高さを示すものと自負している.しかしながら,新薬の研究開発は,近年ますます難易度が高まっており,膨大なリソース(ヒト,モノ,カネ)と開発期間が必要となってきている.このような状況を乗り切るためには,創薬の様々な場面でアカデミアの先生方,ベンチャー企業,さらには同業他社と協業して,創薬イノベーションを起こすことが重要と考えている.当社ではこれまでに様々なオープンイノベーションに取り組んできており,今回はその中で以下の4つ(①公募型オープンイノベーション,②「組織」対「組織」の連携,③アカデミア発ベンチャー企業との連携,④アカデミアからのシーズ獲得)に焦点を当てて紹介する.
話題
FYI(用語解説)
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2019 年 55 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,54巻10号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
くすりの博物館をゆく
  • 池田 幸弘
    2019 年 55 巻 1 号 p. 60-61
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    鳴子温泉を訪ねる.ここは400もの源泉数を有し,日本国内で確認されている泉質11種のうち9種類が湧出しているという.837(承和4)年に鳥谷ヶ森(鳴子火山)が噴火した際に,熱湯が噴出したことが起源といわれていることから,ゆうに千年を超える歴史がある.何かの企画で,温泉番付の東の横綱と認定されたというのも頷ける.源義経が平泉へ落ちのびる途中に鳴子に立ち寄った伝説や,松尾芭蕉が「奥の細道」で鳴子から尿前(しとまえ)の関所を経る街道を通ったことでも知られており,義経や芭蕉にちなんだ名所や逸話なども多く遺されている.
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
トピックス
  • 重田 雅之
    2019 年 55 巻 1 号 p. 65
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    グラフェンオキシド(Graphene Oxide: GO)は,黒鉛に対する酸化反応によって調製される単層の炭化水素である.この酸化工程にて生じたカルボキシ基を固体ブレンステッド酸触媒として利用する反応のほか,ジグザグ端のラジカルを触媒活性種として用いたベンジルアルコール類の空気酸化反応や芳香族化合物の酸化的ホモカップリング反応も報告されている.しかし,このようなGOのラジカル触媒活性は,これまで異分子間の炭素-炭素結合形成反応には利用されていなかった.今回Lohらは,GOとトシル酸(TsOH・H2O)の組み合わせにより,キサンテンの9位における酸化的クロスカップリング反応を開発したので,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Abdouss M. et al., New J. Chem., 41, 11471-11497(2017).
    2) Kobayashi Y. et al., Phys. Rev. B, 71, 193406(2005).
    3) Bielawski C. W. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 49, 6813-6816(2010).
    4) Nishina Y. et al., Sci. Rep., 6, 25824(2016).
    5) Loh K. P. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 57, 10848-10853(2018).
  • 藤川 雄太
    2019 年 55 巻 1 号 p. 66
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    細胞内の酸化還元(レドックス)環境は活性酸素種(reactive oxygen species: ROS)の発生とそれに拮抗する様々な抗酸化分子(チオレドキシンなど)による抗酸化能のバランスによって成り立っている.一般的にがん細胞は正常細胞に比べ酸化ストレスに脆弱であることが知られているが,がん細胞内はROSレベルが高い一方で,抗酸化作用も亢進していることで生存が維持されている.がん遺伝子によらないこのような性質は,新しい抗がん剤の創製に有用な創薬標的として期待されている.本稿では,チオレドキシン還元酵素1(TXNRD1)選択的不可逆阻害剤が,抗がん細胞活性を示すというStaffordらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Luo J. et al., Cell, 136, 823-837(2009).
    2) Stafford W. C. et al., Sci. Transl. Med., 10, eaaf7444(2018).
    3) Anestål K. et al., PLoS One, 3, e1846(2008).
  • 吉本 尚子
    2019 年 55 巻 1 号 p. 67
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    ケシが生合成するモルヒナン型アルカロイドのうち,モルヒネ(1)はがんや外傷による疼痛の緩和に用いられる天然オピオイドとして,テバイン(2)は半合成オピオイドであるオキシコドンやオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソン等の製造原料として,極めて重要な化合物である.気象災害や病害によるケシ収穫量減少に伴う医薬品の供給不足を避けるため,遺伝子組換え微生物を用いて,モルヒネやテバインを安定で効率的に生産する技術の開発が期待されている.今回,モルヒネ生合成において非酵素的に進むと考えられていたテバイン合成反応を触媒する酵素が同定され,効率的なテバインの異種生物生産が可能になったので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Chen X. et al., Nat. Chem. Biol., 14, 738-743(2018).
    2) Galanie S. et al., Science, 349, 1095-1100(2015).
    3) Nakagawa A. et al., Nat. Commun., online 5 Feb. 2016, doi: 10.1038/ncomms10390.
  • 布目 真梨
    2019 年 55 巻 1 号 p. 68
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    水環境は水質汚濁防止法に基づき,公共用水などに水質基準が設けられている.一般的には,重金属や有機化学物質などが規制の対象となっており,それらの化合物は,常にモニタリングされている.
    水試料から微量の分析対象物質を測定する場合,前処理技術が重要なポイントとなる.現在,最も汎用されているのが,固相抽出法(solid phase extraction: SPE)である.一般的に,SPEの充填剤は,オクタデシルシリル化シリカゲルを中心に,イオン交換やグラファイトカーボン,それらを混合したポリマーなど,様々なものが用途に合わせて利用されている.今回,新たにバッキーペーパー(buckypaper: BP)を用いたSPEを開発し,環境水へ応用した報告があり,本槁にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Tomai P. et al., Anal. Chem., 90, 6827-6834(2018).
    2) Dikin D. A. et al., Nature, 448, 457-460(2007).
  • 福地 守
    2019 年 55 巻 1 号 p. 69
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    酵素(ルシフェラーゼ)と基質(ルシフェリン)の酵素反応により生じる生物発光は,生体動物を用いたin vivoイメージングに応用されている.特に,ホタルルシフェラーゼ(F-Luc)とD-ルシフェリンの組み合わせは,in vivoイメージングのゴールドスタンダードとして,がんや脳科学などの研究領域で利用されている.しかし,D-ルシフェリン自体の組織透過性が悪く血液脳関門も通過しにくい,また,F-LucとD-ルシフェリンの酵素反応により得られる発光は,562nmの黄緑色領域の光であるために生じた発光の組織透過性が悪い,などの欠点があり,F-LucとD-ルシフェリンの組み合わせは,必ずしもin vivoイメージングに最適化されたものではなかった.AkaLumine-HClは,これらの問題を解決するために合成されたルシフェリンアナログである.D-ルシフェリンと比較すると,AkaLumine-HClの生体内での組織透過性はよく,また,F-LucとAkaLumine-HClの酵素反応により得られる発光は,677nmの赤色領域の光であるため,生じた発光の組織透過性も改善された.しかし,D-ルシフェリンと比較すると,AkaLumine-HClでは発光強度が低下する問題があった.今回,Iwanoらは,大腸菌発現系を利用してルシフェラーゼ遺伝子ライブラリーを作成することにより,AkaLumine-HClを基質とする最適なルシフェラーゼ変異体を探索した.最終的に,28アミノ酸が置換されたF-Luc変異体「Akaluc」を同定し,Akaluc/AkaLumine-HClを用いた生物発光イメージング(bioluminescence imaging: BLI)は「AkaBLI」と名付けられた.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Contag C. H., Bachmann M. H., Annu. Rev. Biomed. Eng., 4, 235-260(2002).
    2) Kuchimaru T. et al., Nat. Commun., 7, 11856(2016).
    3) Iwano S. et al., Science, 359, 935-939(2018).
  • 今 理紗子
    2019 年 55 巻 1 号 p. 70
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    トリプトファン(tryptophan: Trp)は必須アミノ酸の1つであり,ヒトの体内では主にindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)によりキヌレニンへと代謝され,エネルギー源として利用される.最近,このIDOの活性化が心血管疾患を悪化させることや肥満を進行させることが報告された.これらのことから,IDOは生活習慣病の発症に関与しているものと考えられるが,その詳細は明らかではない.本稿では,腸のIDO活性が生活習慣病の発症に関わる腸内細菌叢の形成に重要な役割を担っていること,ならびに腸のIDOが生活習慣病の予防や治療のターゲットになり得ることを示したLauransらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Favennec M. et al., Obesity., 23, 2066-2074(2015).
    2) Metghalchi S. et al., Cell Metab., 22, 460-471(2015).
    3) Laurans L. et al., Nat. Med., 24, 1113-1120(2018).
    4) Beatty G. L. et al., Clin. Cancer Res., 23, 3269-3276(2017).
  • 遠藤 江美
    2019 年 55 巻 1 号 p. 71
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    乳幼児期における急性胃腸炎の主因であるA群ロタウイルス(group A rotaviruses: RVA)は,宿主細胞表面に吸着すると,エンドサイトーシスによって侵入し,ウイルスの外殻タンパク質の分解を受けて脱殻する.この脱殻にはエンドソームの環境変化が関与していると報告されており,その要因の1つがエンドソームの酸性化であると言われている.一方で,分裂,分化,代謝などの細胞プロセスを制御するホスホイノシタイド3-キナーゼ/タンパク質キナーゼB(PI3K/Akt)および分裂促進因子活性化タンパク質細胞外シグナル制御性キナーゼ/細胞外キナーゼ(MEK/ERK)シグナル経路が多くのウイルス感染機序に利用されることが知られている.本稿では,後期エンドソーム(late endosome: LE)の過程において脱殻が起こるlate-penetration(L-P)型RVAの感染初期におけるシグナル経路活性化とエンドソーム酸性化の関係を明らかにしたSolimanらの研究論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Arias C. F. et al., J. Virol., 89, 890-893(2015).
    2) Chemello M. E. et al., J. Virol., 76, 13083-13087(2002).
    3) Soliman M. et al., PLoS Pathog., online 14, e1006820(2018).
  • 荒木 朋貴
    2019 年 55 巻 1 号 p. 72
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/01
    ジャーナル フリー
    コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれ,生体に侵襲が加わった際に分泌され,生体の恒常性維持に寄与する.敗血症性ショック患者では,ストレスの程度に対して十分な生体内反応が得られない,コルチゾール分泌不全(相対的副腎不全)状態となる.また,末梢組織のコルチゾール反応性低下が加わり,「重症関連コルチコステロイド障害」となる.このような機能的不全の是正による死亡回避を期待し,敗血症性ショックに対してステロイドが投与されてきたが,その評価は定まっていない.日本版敗血症治療ガイドライン(J-SSCG2016)では,十分な輸液と昇圧剤の投与でも循環動態が不安定な敗血症性ショックに対するヒドロコルチゾン(HDC)の使用は,「質の低いエビデンス」に基づく「弱い推奨」とされており,質の高いエビデンスが望まれる.今回,敗血症性ショックに対してステロイド投与が有効か検討したADRENAL試験の結果を紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) The Japanese Clinical Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2016(J-SSCG2016).
    2) Venkatesh B. et al., N. Engl. J. Med., 378, 797-808(2018).
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