ファルマシア
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抗マラリア薬アルテミシニンの恒常的生産系の確立に向けて
清水 陽平
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2019 年 55 巻 12 号 p. 1166

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抄録

アルテミシニンは,キク科クソニンジンが生産するセスキテルペンラクトンであり,抗マラリア薬として世界中で多くの命を救ってきた.植物からのアルテミシニンの供給量は限られており,価格も不安定であった.そこで,Paddonらはアルテミシニンの生産に合成生物学的手法を取り入れた.酵母にアルテミシニン生合成遺伝子を導入発現させることにより,アルテミシニン前駆体を合成する技術を開発した.この技術によりアルテミシニンの安定供給と価格低下が期待されたが,実際には生産コストが植物からのアルテミシニン精製のそれを下回ることができなかった.アルテミシニンは植物重量当たりの含有量が非常に少ない.その原因の1つとして,アルテミシニン生合成が腺毛という特殊な分泌組織に限られていることが考えられてきた.ところが最近,Juddらは自家受粉を繰り返し作出した純系クソニンジンの葉の非腺毛細胞においてもアルテミシニンが生合成されることを明らかにしたので本稿で紹介したい.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Paddon C. J. et al., Nature, 496, 528-532(2013).
2) Judd R. et al., Mol. Plant, 12, 704-714(2019).
3) Wang S. B. et al., Planta, 244, 999-1010(2016).
4) Shen Q. et al., Mol. Plant, 11, 776-788(2018).

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© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
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