ファルマシア
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腸内細菌は免疫グロブリンAを利用して定着する
梁 陸伊韻
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2019 年 55 巻 2 号 p. 170

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抄録
ヒトは腸内に細菌叢を構成することで健康を維持しており,常在細菌叢の変容は疾患に直結する.腸内細菌叢の構成には年齢や人種,生活習慣などの因子が関連するが,腸内細菌の宿主共生のメカニズムについては不明な点が多い.近年,腸内細菌叢と宿主の相互作用に免疫系の調節が関わることが注目されている.免疫グロブリンA(IgA)は粘膜免疫により病原菌に対しては防御反応を担う一方,我々の腸粘膜において共生しているある種の腸内細菌に結合(コーティング)して,細菌の宿主への定着に関わっていることが明らかとなってきた.IgAの欠乏は腸内細菌叢バランスに多大に影響を及ぼすことから,IgAによる腸内細菌の宿主への定着プロセスの解明が望まれてきた.腸内細菌が宿主に定着するためには細菌同士の凝集が必要である.最近,Donaldsonらは,IgAが腸内細菌叢の優勢菌の1つであるBacteroides fragilis(B. fragilis)の凝集を促進することにより,本細菌の宿主への定着と安定的な宿主共生を維持することを明らかにした.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Bollinger R. R. et al., Immunology, 109, 580-587(2003).
2) Moor K. et al., Nature, 544, 498-502(2017).
3) Donaldson G. P. et al., Science, 360, 795-800(2018).
4) Coyne M. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 105, 13099-13104(2008).
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© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
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