ファルマシア
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液体のり成分が拓く造血幹細胞の長期培養と前処置不要の骨髄移植の可能性
安藤 智暁
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2020 年 56 巻 2 号 p. 165

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抄録

ヒトの血液には,赤血球,白血球,血小板などの血球成分が存在しているが,これらには寿命があり,私たちの血液は常に新たに作られることによってその恒常性が維持されている.新しく作られる過程には何段階もの分化のステップがあり,最も未分化な状態から,徐々に方向性の決まった前駆細胞,そして完全に分化した血球細胞へと進みながら,細胞の数を増やしていく.この分化と増殖は一体となっているので,後戻りできない.しかし,その起源となる「最も未分化な細胞」だけは,分裂するときに「未分化なままでいる細胞」と「分化・増殖に進む細胞」の両者を生む必要がある.この細胞こそが造血幹細胞であり,未分化なまま(=多能性を維持したまま)自己複製するという非常に特殊な能力を備えている.もしこの能力が失われてしまうと,全てが方向性の決まった細胞となり,徐々に分化が進んで,やがては新たな血球系細胞の供給が止まってしまう.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Wilkinson A. C. et al., Nature, 571, 117-121(2019).
2) Ieyasu A. et al., Stem Cell Reports, 8, 500-508(2017).

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© 2020 The Pharmaceutical Society of Japan
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