ファルマシア
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降水量はセンソの品質の鍵となるか
増井 涼
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2020 年 56 巻 8 号 p. 780

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抄録

生薬センソは,アジアヒキガエルBufo gargarizans CantorまたはB. melanostictus Schneiderの鼓膜後部の耳腺から出る乳白色の分泌物を集めて濾して成形し,乾燥したものである.日本薬局方において,センソの品質管理指標成分としてはブフォステロイド(ブファジエノリド型ステロイド,BFS)に分類されるブファリン,シノブファギンおよびレジブフォゲニンが設定され,その総量が5.8%以上と規定されている.BFS類には強心,局所麻酔,抗炎症作用等の薬理作用が知られており,センソの薬効の中心的な役割を担う.しかし,ヒキガエルが分泌するBFS類は外敵から身を守るための化学防御物質であり,組成や含量は産地によって大きく異なることが報告されている.また,ヒキガエルにおけるBFS類の生合成機構はほとんど明らかにされていないため,養殖による成分管理は非常に難しい.今回そのような状況に光明をもたらす研究成果として,Caoらによる,地理および気候的変化がアジアヒキガエル耳腺分泌物の成分組成に与える影響についての報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Zhang P. et al., Chem. Pharm. Bull., 53, 1582-1586(2005).
2) Cao Y. et al., Sci. Rep., 9, 17236(2019).
3) Bókony V. et al., J. Chem. Ecol., 42, 329-338(2016).

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© 2020 The Pharmaceutical Society of Japan
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