毒ガスとして知られている硫化水素(H2S)は、生体内において、神経伝達や、血管緊張性、炎症を調節し、細胞の酸化ストレスからの保護、生体内におけるエネルギーの産生や酸素濃度センサーとしての役割を担っている。H2Sは、L-システイン及びD-システインから酵素反応によって合成される。また、Sがさらに直列につながったポリサルファイド(H2Sn)も酵素反応によって生合成され、シグナル分子として働いていることが分かってきた。H2SやH2Snは、標的タンパク質のシステイン残基にさらに硫黄原子を付加するS-過硫化や、ヘムタンパクの鉄に結合することによって、その機能を調節している。ここでは、H2SとH2Snの生理機能とその乱れによって生じる疾患について概説する。