蛍光色素の分子構造中もしくはその近傍にヨウ素原子や臭素原子,金属イオンなどの原子番号の大きな原子が導入されることで,蛍光色素の発蛍光が起こらなくなる現象が見られる.通常,蛍光色素への光の照射により蛍光色素は励起一重項状態となり,基底状態へと戻るとともに蛍光を発する.しかし,原子番号の大きな原子が近傍に存在することで,電子の公転と自転により誘起された2種類の磁気モーメントの相互作用であるスピン-軌道相互作用が生じ,これが大きいほどスピン反転がしやすくなる.これを重原子効果と呼ぶ.このスピン反転によって,励起一重項状態の蛍光色素が励起三重項状態へとなり,それによって蛍光が消光する.