ファルマシア
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ケモインフォマティクス手法を利用したマラリア予防薬剤の開発戦略
小川 慶子
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2021 年 57 巻 1 号 p. 62

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抄録

過去20年間の取り組みによってマラリアの罹患率と死亡率は大きく低下したが,最近では再び症例数の増加が見られており早急な対策が求められている.マラリアの予防手段の1つに化学的予防がある.化学的予防とは,事前に予防内服をすることで感染防御をする手段である.しかし,現状では耐性や副作用の問題で使用できる場面は限られている.また,これまではマラリア原虫の複数の発育ステージに効力を発揮する強力な治療薬の開発が目標とされてきたため,特定の発育ステージのみに作用する薬剤や遅効型の予防薬剤の開発は遅れていた.Abrahamらは,低分子ライブラリを用いたデータ分析に基づくケモインフォマティクス手法とマラリアの発育ステージに応じた活性評価を組み合わせて検討することで,化学的予防薬剤を含む抗マラリア薬探索の効率化を試みたので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) World health Organization. “World malaria report 2019”,2020年8月27日.https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/malaria.
2) Abraham M. et al., ACS Infect. Dis., 6, 613-628(2020).
3) Goering V. R. ほか,“ミムス微生物学:カラー版(第4版)”,西村書店,東京,2012, pp. 370-373.

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© 2021 The Pharmaceutical Society of Japan
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