ファルマシア
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追悼
根岸英一先生を偲んで
柴﨑 正勝
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2021 年 57 巻 10 号 p. 938

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抄録

2010年10月6日,午後6時45分頃だった.協同研究者が私の部屋に駆け込んで来た.根岸クロスカップリングの開発により根岸英一先生へのノーベル賞授賞が決まったとの報告である.根岸先生が74歳の頃であった.共同受賞者として鈴木章先生,Heck 先生もノーベル化学賞を受賞された.私が初めて根岸先生にお会いしたのは,ハーバード大学に留学中の1975年頃であった.お会いしたと書いたが,本当は後ろ姿をお見かけしただけである.岸義人教授(当時)を根岸先生が訪問され,シラキュース大学へお帰りになられる時であった.ノーベル賞の対象になった根岸クロスカップリングは1976年の発表であり,おそらく1975年は論文投稿直前ではなかったかと思われる.根岸先生と本当にお会いし,化学のことを議論し,ビールをご一緒させて頂いたのは,小生が帝京大学薬学部に在籍中の1980年頃であった.池上四郎教授(当時)が根岸先生と大変親しくされておられ,帝京大学薬学部で素晴らしい講演をしてくださったのが御縁の始まりである.それ以来,何かにつけて励ましのお言葉をかけて下さり,私にとっては恩師に相当するような大先生でありました.ノーベル賞御受賞後も含め2度パデュー大学にお招き頂き講演をする機会も与えて下さいました.日本の将来をリードする有機化学者を育成する大津会議でも講演して下さり,常に若者を勇気づける姿勢は素晴らしいものがありました.

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