ファルマシア
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ビスマス触媒を用いるアリールボロン酸からのアリールトリフラート類の合成
村田 裕基
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2021 年 57 巻 5 号 p. 410

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抄録

ビスマス(Bi)は安定元素の中で最も大きい原子量を持ち,次没食子酸ビスマスは止瀉薬として利用されるなど,薬学とも密接に関連する元素の1つである.その一方で,有機合成化学におけるBiの利用例は少なく,触媒としては単純なルイス酸としての利用に限られていた.しかし,ごく最近Cornellaらによって,Bi(III)/Bi(V)の触媒サイクルを基軸とするアリールボロン酸のフッ素化反応が報告され,触媒としての機能に注目が集まっている.
ところで,アリールトリフラート(ArOTf)はクロスカップリング反応における擬ハロゲン化物として有機合成上重要な分子素子であるが,触媒的C(Ar)−OTf結合形成反応による合成例は少ない.これは,OTfアニオンの求核性や遷移金属への配位能が低いため,還元的脱離の進行が難しいことに起因する.今回Cornellaらは,Biの高い酸素親和性に着目し,C(Ar)−OTf結合形成反応を経由するBi触媒を活用したアリールトリフラート類の新規合成法を開発したので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Planas O. et al., Science, 367, 313-317(2020).
2) Planas O. et al., J. Am. Chem. Soc., 142, 11382-11387(2020).

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© 2021 The Pharmaceutical Society of Japan
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