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類洞内皮細胞のGATA4欠損により肝臓は線維化へとスイッチされる
山口 桃生
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2021 年 57 巻 6 号 p. 546

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抄録

「血管形成をつかさどる生理活性物質」をアンジオクラインと呼ぶが,最近,種々の臓器において疾患に関わる組織特異的アンジオクラインの存在が報告されている.肝傷害時,治癒反応として肝星細胞(HSC)が活性化して肝臓は線維化するが,過剰な線維化は肝実質細胞の再生を阻害し,肝障害を悪化させる.急性肝傷害時には,肝類洞内皮細胞(LSEC)での肝再生関連アンジオクライン分泌により肝再生が促進されるのに対し,慢性肝傷害時には,LSECでの肝線維化促進性のアンジオクライン分泌により線維化へと向かう.すなわち,肝再生と肝線維化のどちらに向かうかは,LSEC由来アンジオクラインによって決定される.肝線維化時に,LSECは毛細血管化し,肝臓への栄養供給能が乏しい内皮細胞へと分化するが,この分化は,LSEC特異的に転写因子GATA4を欠損させると誘導される.本稿では,肝再生と肝線維化をスイッチングするLSEC由来肝線維化促進性アンジオクラインの発現調節へのGATA4の関与を示唆した報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Butler J. M. et al., Nat. Rev. Cancer., 10, 138-146(2010).
2) Ding B. S. et al., Nature, 505, 97-102(2014).
3) Géraud C. et al., J. Clin. Invest, 127, 1099-1114(2017).
4) Winkler M. et al., J. Hepatol., in press(2020).

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© 2021 The Pharmaceutical Society of Japan
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