ファルマシア
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57 巻, 6 号
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目次
  • 2021 年 57 巻 6 号 p. 466-467
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    表紙の説明:今月の表紙は,ムラサキを題材にした「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」である.これは,額田王が自分の夫である中大兄皇子(後の天智天皇)のいる前で,夫の弟の大海人皇子に宛てて詠まれた和歌とされている.なんだか,どろどろの三角関係みたいでちょっとスリリング.電子付録では,三人の思いを妄想しつつ,民間薬としてのムラサキ(紫根),植物としてのムラサキ科の仲間,ムラサキと同じく草原で見られる花についても紹介したい.
オピニオン
Editor's Eye
最前線
最前線
最前線
セミナー
  • 平山 文俊
    2021 年 57 巻 6 号 p. 490-494
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    固体物質は,分子が3次元的に規則的に並んだ結晶と分子配列に一定の規則性を持たない非晶質に大別される.結晶多形は,同一化合物でありながら,結晶内の分子配列あるいは分子のコンフォメーションが異なるものであり,固体特有の現象である.したがって,溶解してしまうと多形現象は消失する.例えば,ダイアモンド,グラファイト,フラーレンは炭素の同素体で多形の関係にある.また,カカオバターには6種の結晶多形が存在し,口中で滑らかに溶融するV型(融点33℃)はチョコレートの原料として,一方,体温付近で溶融するVI型(融点36℃)は坐剤基剤に最適である.結晶の多形現象は,固体物質において一般的に観測される現象であり,医薬品は構造の複雑さから約85%が結晶多形を有するといわれている.多形の中で融点が高く,溶解度が最も低いものが安定形,それよりも熱力学的に不安定なものは準安定形と呼ばれる.準安定形や非晶質体は安定形に比べて,溶解度や溶解速度が大きいため,経口投与時の薬物のバイオアベイラビリティを改善する手段として有効である.しかしながら,準安定形の結晶化が困難なことや保存中に安定形へ転移することなどから,実際製剤の原薬としての使用は限られており,選択的な多形の調製技術あるいは分子レベルで多形転移を制御する技術の確立が望まれている.
    一方,同一多形(固体内の分子配列やコンフォメーションが同じ)であっても,結晶の外観(針状結晶,板状結晶など)が異なる現象を晶癖(crystal habit)が異なるという.晶癖が異なると,溶解速度をはじめ,流動性,ぬれ性,付着性,打錠性などの物理化学的性質が変化することが知られている.そのため,日本薬局方には物理化学的試験法の粉体粒度測定法として,光学顕微鏡法(第1法),ふるい分け法(第2法),粉体の比表面積測定法ならびに熱分析,粉末X線回折などが収載され,原薬の固体物性,結晶形,結晶のサイズ,晶癖などの厳密な評価ならびに制御が求められている.
セミナー
話題
  • 生体内非酵素的反応のコンピュータによる解析
    小田 彰史, 仲吉 朝希
    2021 年 57 巻 6 号 p. 500-504
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    生物は高度に制御された化学反応の組み合わせによって機能する、極めて精緻かつ玄妙なシステムであると語られることが多い。もちろんそれは事実ではあるが、生体は高純度な物質のみによって構成されたきれいな系ではなく、雑多な分子が多数集まって構成された不純物の多い系である。そのため酵素による制御を受けていない「美しくない」化学反応がしばしば起こり、それが加齢性疾患等の原因となることが指摘されている。一方で非酵素的反応は制御されていないがゆえに実験的な解析が難しく、分析技術が未だ発展の途中にある。そこで、本稿では計算化学手法による非酵素的反応の解析について紹介する。
話題
  • 江坂 幸宏
    2021 年 57 巻 6 号 p. 505-509
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    日本人の死因の第一位である疾病のがんの発生は、多くが核酸塩基の損傷から始まる。核酸塩基の損傷体は,電磁波や化学物質による発生と巧妙な仕組みによる修復のバランスの中で,生体DNA中に常に存在している.もし,発がん抑制遺伝子部位などの重要な場所に損傷が起き,配列情報の変化が確定され,さらに、修復,アポトーシスを免れれば,がん細胞の発生につながる.ごく稀に,防御の目をかい潜って暴走的な増加が始まれば発症に至る.本稿では,DNA中の損傷塩基を未病状態にある疾病のリスクマーカーと捉える取り組みについて論じる.
話題
話題
セミナー:創薬科学賞
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2021 年 57 巻 6 号 p. 526
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和3年3月23日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2021 年 57 巻 6 号 p. 527-531
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,57巻4号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
承認審査の視点
最終講義
FYI(用語解説)
  • 小川 美香子
    2021 年 57 巻 6 号 p. 525_1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    モノクローナル抗体と低分子薬をリンカーで結合させた薬剤のこと.がん細胞に発現する抗原に結合する抗体により,薬物をがん細胞へ特異的に運搬できるため,より効果的で副作用の小さい治療が達成される.
    近年,様々なADCが開発されており期待が高まっている.標的細胞内でリンカーが切断され薬剤が放出される,薬剤放出型のADCの開発が最も多い.光免疫療法は薬剤を光感受性物質(photosensitizer)とした治療法であり,薬剤放出型ではなく特定の細胞で光によって薬剤が活性化されるADC(APC)である.
  • 藤岡 礼任, 神谷 真子
    2021 年 57 巻 6 号 p. 525_2
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    非線形ラマン効果の1つ.励起光と同時に,励起光に対してコヒーレントなストークス光を入射すると,誘導放出が起こり,励起光が減衰し,ストークス光が増幅される現象.この現象を利用したSRS顕微法は,非常に微弱な光であるラマン散乱光を高感度に検出することができる手法として知られており,一般的な自発ラマン顕微鏡では1枚の像を取得するのに数十分の時間がかかってしまうが,SRS顕微鏡ではビデオレートでの高速イメージングが可能である.
  • 平山 文俊
    2021 年 57 巻 6 号 p. 525_3
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    結晶多形を有する化合物が溶液から晶析する時,熱力学的安定性の低い準安定形が先に晶析し,その後安定形が出現する現象をオストワルドの段階則(Ostwald’s step rule,Ostwald’s rule of stages)といい,Whilhelm Ostwald(1909年ノーベル化学賞受賞)により提唱された理論である.結晶化の第1段階である1次核発生速度は,溶液の過飽和度と結晶核の界面エネルギーに依存するが,核発生では後者の影響が大きくなるため,高過飽和度では界面エネルギーが小さい準安定形の晶析が優勢となる.
    なお,オストワルド・ライプニング(Ostwald ripening)は,同一多形でも結晶の大きさに不均一性がある場合,小さい結晶が溶解し,大きい結晶が成長する現象をいう.
  • 大貫 義則
    2021 年 57 巻 6 号 p. 525_4
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    NMR現象において,ラジオ波(RF)パルスの照射で励起した核スピンが基底状態に戻る過程を“緩和”と呼ぶ.T2緩和は横緩和とも呼ばれ,横方向の磁化ベクトルが時間(t)とともに減衰する緩和過程のことである.NMR信号のT2緩和挙動はII0=exp(−tT2)と表され,この式の時定数(T2)がT2緩和時間である.したがってT2緩和時間とは,RFパルス照射によって発信されるNMR信号が36.8%に減衰するまでの時間と定義することもできる.
    またNMR緩和には,T2緩和のほかに回復型のT1緩和(縦緩和)がある.T1緩和時間は,NMR信号の縦磁化が63.2%まで回復するのに要する時間と定義される.
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
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留学体験記 世界の薬学現場から
トピックス
  • 山田 真希人
    2021 年 57 巻 6 号 p. 542
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    含フッ素不斉四置換炭素は,フッ素の元素特性および不斉四級炭素の構造的特徴の両方を有することから,医薬化学研究において重要である.含フッ素不斉四置換炭素化合物の合成法として,エナンチオ選択的な求電子的フッ素化反応が知られているが,反応点はカルボニルα位に限られており,新しい方法論の開発が待たれていた.これに対しHartwigらは,キラルなホスホロアミダイト系配位子を持つイリジウム(Ⅲ)触媒を用いて,アリル位に脱離基を持つモノフルオロアルケンのSN2’型反応によるエナンチオ選択的合成法を報告した.今回彼らは,イリジウム(Ⅲ)触媒とリチウム試薬を用いたアリル位C-F結合の活性化法を開発し,ジフルオロメチレン基の不斉非対称化による含フッ素不斉四置換炭素の構築に初めて成功したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhu Y. et. al., Chem. Rev., 118, 3887-3964(2018).
    2) Butcher T. W., Hartwig J. F., Angew. Chem. Int. Ed., 57, 13125-13129(2018).
    3) Butcher T. W. et. al., Nature, 583, 548-554(2020).
  • 寺坂 尚紘
    2021 年 57 巻 6 号 p. 543
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    複数の抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌による感染症は世界中で問題になっている.さらに,認可される抗生物質は過去数十年で減少しており,新たな抗生物質探索方法の開発は急務である.ペプチド性天然物である非リボソームペプチド(NRPs)は多彩な構造を有し,生理活性が期待できる.例えばバンコマイシンやダプトマイシンなどの抗菌NRPsが発見されており,NRPs類似化合物のライブラリーは,新規抗生物質の探索に有用であると考えられる.しかし,NRPs合成酵素は高い基質選択性を持つ巨大複合体であるため,酵素改変による多様性の高いNRPsライブラリー構築は未だ困難である.
    一方で,リボソーム翻訳系翻訳後修飾ペプチド(RiPPs)は,DNAから転写・翻訳されたペプチドに翻訳後修飾酵素が化学修飾を導入することで合成される.RiPPsの翻訳後修飾酵素の多くは基質許容性が高く,さらに縮重塩基を持つDNAを用いることで,高多様性ペプチドライブラリーの構築が可能である.本稿では,ハイスループットスクリーニング系に適用可能なRiPPs合成系を用いて,抗菌活性を持つNRPs類似化合物を合成するアプローチに関する論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Niquille D. L. et al., Nat. Chem., 10, 282-287(2018).
    2) Zhao X. et al., Cell. Chem. Biol., 27, 1262-1271(2020).
    3) Li Y. X. et al., Nat. Commun., 9, 3273(2018).
    4) Urban J. H. et al., Nat. Commun., 8, 1500(2017).
  • 大手 聡
    2021 年 57 巻 6 号 p. 544
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    モレキュラーグルー(Mol Glue,分子糊)は,通常は相互作用しないタンパク質同士の相互作用を引き起こし,新しい機能の発現や,機能阻害を引き起こす低分子化合物で,これまでに創薬標的とすることが難しかったタンパク質(undruggable protein)を標的とした創薬に繋がる新たなモダリティとして期待されている.しかし,Mol Glueとなる化合物は稀で,その発見は偶然に依存していたため,医薬品としての開発は十分に進んでこなかった.Isobeらは分子内に複数の求電子部位を有する化合物が,タンパク質のシステイン残基と共有結合を形成することでMol Glueとして機能すると推測した.そして,放線菌が生産するマヌマイシン系ポリケチドであるアスカマイシン(1)がMol Glueとして働き,がん抑制因子TP53を活性化することを見いだしたので本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Stanton B. Z. et al., Science, 359, eaao5902(2018).
    2) Ōmura S. et al., J. Antibiot., 29, 876-881(1976).
    3) Isobe Y. et al., Nat. Chem. Biol., 16, 1189-1198(2020).
  • 田村 幸介
    2021 年 57 巻 6 号 p. 545
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    医薬品中に含まれる不純物および分解生成物は予期せぬ副作用をおよぼす恐れがあるため,各国規制当局のガイドラインに定められた限度値に基づいて,厳格に管理されている.近年,サルタン系医薬品において,限度値を超える発がん性物質N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)およびN-ニトロソジエチルアミン(NDEA)の混入が認められ,各国で回収が行われている.限度値は各医薬品の1日最大摂取量に応じて異なるものの,原薬含有量に対するニトロソアミン類の限度値を0.03ppm以下と規定している事例もあり,高感度分析を必要とする厳しい管理が求められている.本稿では,医薬品の原薬製造工程におけるニトロソアミン類混入の可能性評価として,アルキルアミンのニトロソ化機構を計算化学により検証した研究について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Snodin D. J. et al., Regul. Toxicol. Pharmacol., 103, 325-329(2019).
    2) Ashworth I. W. et al., Org. Process. Res. Dev., 24, 1629-1646(2020).
    3) Abe Y. et al., Chem. Pharm. Bull., 68, 1008-1012(2020).
  • 山口 桃生
    2021 年 57 巻 6 号 p. 546
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    「血管形成をつかさどる生理活性物質」をアンジオクラインと呼ぶが,最近,種々の臓器において疾患に関わる組織特異的アンジオクラインの存在が報告されている.肝傷害時,治癒反応として肝星細胞(HSC)が活性化して肝臓は線維化するが,過剰な線維化は肝実質細胞の再生を阻害し,肝障害を悪化させる.急性肝傷害時には,肝類洞内皮細胞(LSEC)での肝再生関連アンジオクライン分泌により肝再生が促進されるのに対し,慢性肝傷害時には,LSECでの肝線維化促進性のアンジオクライン分泌により線維化へと向かう.すなわち,肝再生と肝線維化のどちらに向かうかは,LSEC由来アンジオクラインによって決定される.肝線維化時に,LSECは毛細血管化し,肝臓への栄養供給能が乏しい内皮細胞へと分化するが,この分化は,LSEC特異的に転写因子GATA4を欠損させると誘導される.本稿では,肝再生と肝線維化をスイッチングするLSEC由来肝線維化促進性アンジオクラインの発現調節へのGATA4の関与を示唆した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Butler J. M. et al., Nat. Rev. Cancer., 10, 138-146(2010).
    2) Ding B. S. et al., Nature, 505, 97-102(2014).
    3) Géraud C. et al., J. Clin. Invest, 127, 1099-1114(2017).
    4) Winkler M. et al., J. Hepatol., in press(2020).
  • 椿 遥花
    2021 年 57 巻 6 号 p. 547
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー病(Alzheimer's disease: AD)は老人斑と神経原線維変化の形成を特徴とする神経変性疾患である.これまでに有効な根本治療薬は開発されていないが,ADの発症仮説「アミロイドカスケード仮説」に基づいて,老人斑の主要構成成分であるアミロイドβ(Aβ)を標的とした創薬研究が進められている.
    Aβ産生酵素であるγセクレターゼはpresenilin(PS),nicastrin(NCT),anterior pharynx-defective 1(APH-1),presenilin enhancer 2(PEN-2)の4つのタンパク質から構成される複合体で,amyloid precursor protein(APP)を基質として,AβのC末端側の切り出しを担当している.また,活性中心サブユニットであるPS1の遺伝子変異が家族性AD(familial AD: FAD)で多く見られることから,γセクレターゼの機能変調がAD発症に深く関わっていることが推察されている.
    本稿では,自然免疫に応答して,ウイルス防御に働くタンパク質として知られるinterferon-induced transmembrane 3(IFITM3)が,γセクレターゼの活性調節を介して,ADの病態悪化に寄与していることを明らかにしたHurらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hur J. Y. et al., Nature, 586, 735-740(2020).
    2) Wolfe M., Biochemistry, 58, 2953-2966(2019).
    3) Shi Y., Holtzman D., Nat. Rev. Immunol., 18, 759-772(2018).
  • 北野 拓真
    2021 年 57 巻 6 号 p. 548
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    がんは日本人の死因の第一位を占め,薬物治療の研究が今最も盛んに進められている疾患の1つである.抗PD-1抗体である免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint blockers: ICB)の開発によりがん治療に大きな変革がもたらされた一方で,これらを用いてもなお半数以上の患者では治療が十分に奏効していない.肥満は様々な疾患のリスクを上昇させることが知られており,生体防御反応に関しても易感染性やワクチン効果の低下をはじめとして免疫応答の低下を引き起こすことから,ICBの治療効果不良の原因の1つとして関与が取り沙汰されている.しかし,Body Mass Index(BMI)と治療の奏効との関連については議論が分かれており,肥満だけでなく生活習慣や飲食物による病態への関与が疑われている.
    本稿では,マウスにおいて食餌由来のフルクトースによりメラノーマがICBによる治療への抵抗性を獲得することを明らかにしたKuehmらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Larkin J. et al., N. Engl. J. Med., 381, 1535-1546(2019).
    2) Kanneganti T. D. et al., Nat. Immunol., 13, 707-712(2012).
    3) Kuehm L. M. et al., Cancer Immunol. Res., 9, 227-238(2021).
    4) Alaoui-Jamali M. A. et al., Cancer Res., 69, 8017-8024(2009).
  • 吉門 崇
    2021 年 57 巻 6 号 p. 549
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    経口血糖降下薬メトホルミンの作用メカニズムには長らく不明な点が多かったが,近年そのターゲットとしてAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)が注目されており,AMPKを介した脂質合成抑制や糖新生抑制が考えられている.また,ミトコンドリア内膜のグリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼも新たなターゲットとして報告された.これらは,肝臓等における糖代謝の是正という点で共通している.一方,メトホルミンはブドウ糖の腸管腔からの吸収を抑制すると考えられていたが,Moritaらによるpositron emission tomography(PET)標識体(18F-フルオロデオキシグルコース:18F-FDG)を用いた研究により,メトホルミンが腸管腔へのブドウ糖排泄を促進することが示唆されたので,本稿で紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhou G. et al., J. Clin. Invest., 108, 1167-1174(2001).
    2) Madiraju A. K. et al., Nature, 510, 542-546(2014).
    3) Horakova O. et al., Sci. Rep., 9, 6156(2019).
    4) Morita S. et al., Diabetes Care, 43, 1796-1802(2020).
    5) Ait-Omar A. et al., Diabetes, 60, 2598-2607(2011).
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談話室
  • 松尾 由理
    2021 年 57 巻 6 号 p. 538_1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/01
    ジャーナル フリー
    教えることから学ぶことへの教育の転換期と考えられている今、限られた講義時間内で全てを教えることができなくても、「学習者の主体的な学び」を工夫することで、学ぶべきことを自ら学べるように指導することが重要であろう。コロナ禍、オンライン授業など、さらなる教育の転換期だからこそ、講義形式の多様性を活かし、学生が自ら学ぶ意欲を掻き立てられるような、記憶に残るような講義を目指したい。
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