2022 年 58 巻 1 号 p. 44-49
生殖発生毒性試験は、医薬品、食品添加物、農薬などのほとんどの化学物質にその検討が義務づけられている重要な特殊毒性試験の一つである。しかし被験個体が母体−胎盤−胎児複合体で多様な作用部位が存在することから、毒性発現機構が複雑で他の毒性試験よりもヒトへの外挿が困難であるという問題がある。本稿では、生殖発生毒性における化学物質の作用点として内分泌系に着目し、実験動物として汎用されているげっ歯類とヒトの発生段階における内分泌機能の種差について概説するとともに、このような種差に作用する内分泌かく乱化学物質の生殖発生毒性の一例について著者らのデータを交えて紹介したい。