ファルマシア
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58 巻, 1 号
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目次
  • 2022 年 58 巻 1 号 p. 6-7
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    特集:生殖・発生の分子メカニズム―生殖医療のさらなる発展を目指して―
    特集にあたって:体外受精の誕生から40年余りが経過し,生殖医療によって誕生する子どもの数は増加の一途をたどっている.超高齢社会を迎えた我が国においても,生殖医療による不妊治療の重要性はますます高まっている.本分野の進展は常に倫理的な問題に直面しながらも,昨今の技術革新によって目覚ましい進歩を遂げ,生殖・発生および性決定の分子メカニズムが明らかにされてきた.さらに私達の身近にある化学物質がそれらに及ぼす影響についての理解も進んでいる.本特集では,生殖・発生研究における最新のエビデンスを紹介し,人類の未来を担う生殖医療のさらなる発展について考えてみたい.
    表紙の説明:卵子が精子と受精を行うことで受精卵となり,それが子宮に着床すると妊娠が成立する.生殖器をはじめ,卵子,精子の構造や機能は複雑な仕組みで成り立っており,受精卵から成体に至る胚発生の過程も極めて巧妙に制御されている.また最近では,からだの性を決定する分子メカニズムも徐々に明らかにされており,非常に興味深いところである.
グラビア
  • 波多野 裕, 増子 大輔, 山縣 一夫
    2022 年 58 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    近年、世界的に不妊治療が盛んに行われるようになっている。特に日本は不妊治療における採卵件数が世界で最も多い、不妊治療大国である。治療後の妊娠率を向上させるため、受精後の発生に関する知見を得ることや、そのための技術開発が望まれている。受精卵は時空間的に性質が大きく変化する特殊な細胞であり、受精卵を傷つけることなくこの変化を追うことが重要である。著者らは、受精卵の生存性に特化した蛍光ライブセルイメージングシステムを用いた観察を行っている。
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
最前線
  • 淨住 大慈, 伊川 正人
    2022 年 58 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    「受精」という言葉は今日においても私たちに生命の神秘やロマンを感じさせてくれる.しかしそれは,不妊のような私たちの人生に直結する問題も,科学的にはまだ十分な解明に至っていないということの裏返しかもしれない.本稿では,哺乳類の精子がどのようにして受精の能力を獲得し,何が原因となって不妊となるのか,ゲノム編集技術によって近年各段に進展しつつある個体レベルでの研究をベースに,筆者らによる最新の知見も交えながら解説したい.
最前線
セミナー
最前線
  • 立花 誠
    2022 年 58 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    性的に未分化な生殖腺が将来精巣になるのか卵巣になるのか、その方向付けのことを性決定と呼ぶ。ほ乳類の性決定には性染色体の組み合わせが重要である。Y染色体を持つ個体では精巣が、Y染色体を持たない個体では卵巣が形成される。ほ乳類の性決定遺伝子であるSRYが1990年に同定されてから、SRYがどのほ乳類でもひとつのエキソンからできていることを疑う研究者はいなかった。私たちは2020年にマウスSryには「隠れたエキソン」が存在し、このエキソンが真の性決定因子をコードしていることを明らかにした。本稿ではこの「隠れたエキソン」の発見に至った経緯を振り返ってみたい。
セミナー
  • 宮川 信一
    2022 年 58 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    すべての生物は、常に環境からさまざまな影響を受けている。特に発生途上の動物は、自らの生存と子孫の繁殖の可能性をより高めるために、外部の環境要因を巧みに利用して、表現型を変えることがある。このような現象は表現型可塑性と呼ばれる。温度という環境要因によって性が決定する温度依存型性決定も、表現型可塑性の一部に含まれる。本稿では、温度依存型性決定を紹介するとともに、我々が調べている温度受容のメカニズム、また最近報告が相次いでいるエピゲノムとの関連について概説する。
セミナー
  • 中西 剛
    2022 年 58 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    生殖発生毒性試験は、医薬品、食品添加物、農薬などのほとんどの化学物質にその検討が義務づけられている重要な特殊毒性試験の一つである。しかし被験個体が母体−胎盤−胎児複合体で多様な作用部位が存在することから、毒性発現機構が複雑で他の毒性試験よりもヒトへの外挿が困難であるという問題がある。本稿では、生殖発生毒性における化学物質の作用点として内分泌系に着目し、実験動物として汎用されているげっ歯類とヒトの発生段階における内分泌機能の種差について概説するとともに、このような種差に作用する内分泌かく乱化学物質の生殖発生毒性の一例について著者らのデータを交えて紹介したい。
セミナー
  • 勝 佳奈子
    2022 年 58 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    不妊とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年を過ぎても妊娠しない場合とされているが、晩婚化などの社会的背景から上記の定義を満たさなくても不妊治療を開始する例も多い。不妊治療は、自然に近い形での妊娠を目指すタイミング法から、体外受精・顕微授精をおこなう高度生殖補助医療まで多岐にわたり、どの治療法を選択するかは検査結果のみならずカップルの社会的・経済的背景や治療の理解度・希望も踏まえ決めていく必要がある。
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 喜屋武 龍二
    2022 年 58 巻 1 号 p. 60
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    ヘテロ環は生物活性天然物や医薬品,農薬などに広く見られる構造であり,高度に官能基化されたヘテロ環の効率的な構築手法の開発は重要な課題である.なかでも,ヘテロ5員環の構築においては,古典的手法であるカルボニル基の縮合による環化のほか,遷移金属を用いたカップリング反応,Huisgen環化などのペリ環状反応が利用されている.一方,ペリ環状反応の1つである6π電子環状反応は主にヘテロ6員環の形成に用いられ,5員環形成の例は限られている.
    これまでに,PodewitzとMagauerらは,2,5-ジヒドロチオフェン1が1,3-ジエン2に容易に誘導可能なことを見いだしている.今回,彼らは6π電子環状反応と環縮小を組み合わせることで,1,3-ジエン2をヘテロ5員環化合物であるピロールへと変換する手法を報告したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Gholap S. S. Eur. J. Med. Chem., 110, 13-31(2016).
    2) Haut F. -L. et al., J. Am. Chem. Soc., 141, 13352-13357(2019).
    3) Haut F. -L. et al., J. Am. Chem. Soc., 143, 9002-9008(2021).
  • 石畠 明裕
    2022 年 58 巻 1 号 p. 61
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    低分子医薬品を創出するには薬理活性だけでなく,物性,薬物動態や安全性など様々な観点で薬として適切となるよう最適化を行う必要がある.創薬の現場では,化合物の枝葉の置換基変換だけでは求めるプロファイルの化合物の取得が困難であることがしばしば起こる.その際は,母核の大幅な変換,すなわちスキャフォールド・ホッピングによるブレークスルーが必須である.薬は鍵と鍵穴に例えられるように,薬理活性を保持したまま母核を変換するには精密な化合物設計が必要である.それまでに得た構造活性相関(SAR)情報や標的分子の立体構造情報等をもとに仮説を立てて行い,メディシナルケミストの経験と発想力が試される.今回Plasらがスキャフォールド・ホッピングにより課題を解決し,嚢胞性繊維症(CF)治療薬GLPG2451(1)を創出したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Van der Plas, S. E. et al., J. Med. Chem., 64, 343-353(2021).
  • 丹羽 莞慈
    2022 年 58 巻 1 号 p. 62
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    抗生物質を生産する微生物の多くは,微生物自身が生産した抗生物質の作用から自らを守るメカニズムである自己耐性機構を有している.例えば,放線菌Streptomyces antibioticusは,細胞内外でオレアンドマイシンのグリコシル化/脱グリコシル化を行い,抗菌活性を制御することで毒性を回避している.このように,細菌の自己耐性機構として化学修飾を利用する例が数多く知られている一方,真菌については限られた例しか知られていない.本稿では,酸化還元反応を利用する真菌のユニークな自己耐性機構を推定したZhangらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Cundliffe E. et al., J. Ind. Microbiol. Biotechnol., 37, 643-672(2010).
    2) Zhang Y. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 60, 2-9(2021).
  • 太田 悠平
    2022 年 58 巻 1 号 p. 63
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    ミトコンドリアは好気呼吸の場であり,酸化的リン酸化によってATPを生産する.このミトコンドリアの内膜にかかる負の膜電位(ΔΨm)は,細胞の生命活動に欠かせない重要なパラメータであり,ΔΨmはATPの合成速度やカルシウムの放出などに影響し,がんの代謝においてはしばしば誤制御される.そのため,これまでにΔΨm測定蛍光プローブが開発されてきた.その多くは親油性カチオン性色素であるため,負のΔΨmに依存して蓄積する.これらの色素はΔΨmがなくなると拡散してしまうため,ΔΨmの可逆的な変化を測定するのが困難であること,また濃度消光により蛍光強度の解釈が困難になるなどの問題点があった.本稿では,前述の問題を克服する光電子誘起移動(photoinduced electron transfer: PeT)型の蛍光プローブを設計・合成し,ΔΨmの可逆的なイメージングを行ったKilerらの研究について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kiler P. E. Z. et al., J. Am. Chem. Soc., 143, 4095-4099(2021).
    2) Deal P. E. et al., J. Am. Chem. Soc., 138, 9085-9088(2016).
  • 二宮 一茂
    2022 年 58 巻 1 号 p. 64
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    腸内細菌と宿主の相互作用の研究にスポットライトが当たるようになって久しい.しかしながら,腸で起こっていることが腸で完結しているかと思えば,そう単純ではない.最近では腸内細菌が様々な疾患や,脳の機能にまで影響を及ぼすことが知られるようになった.また腸内細菌を正常化させる治療として健常人からの便移植も進められている.しかし,腸内細菌と宿主の相互作用の詳細な分子メカニズムは未解明な部分が多い.クローン病や潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)は腸粘膜バリアの調節不全や腸内毒素症と関係している.特にクローン病患者の腸では,大腸菌の中でも特に腸管侵入性大腸菌が多く存在し,IBDの悪化に関わっている.また,急性感染性胃腸炎において腸管侵入性大腸菌が付着すると,クローン病を誘発するリスクが高まる.さらに,腸管侵入性大腸菌は免疫による除去が難しく,この大腸菌が感染したマクロファージは炎症性サイトカインの腫瘍壊死因子(TNF)を大量に産生し,クローン病を悪化させる.今回,膵臓から分泌されるタンパクglycoprotein 2(GP2)が腸内細菌の腸管への侵入を防ぎ,IBDを抑制することが明らかにされたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Morais L. H et al., Nat. Rev. Microbiol., 19, 241-255(2020).
    2) Kurashima Y. et al., Nat. Commun., 12, 1067(2021).
    3) Terahara K. et al., J. Immunol., 180, 7840-7846(2008).
    4) Hase K, et al., Nature, 462, 226-230(2009).
    5) Martin-de-Carpi J. et al., Front. Pediatr., 5, 218(2017).
  • 海堀 祐一郎
    2022 年 58 巻 1 号 p. 65
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    生体における種々の組織は,構成する細胞が組織幹細胞から供給されることにより維持されている.組織幹細胞は,周囲の細胞群や細胞外基質などの微小環境(幹細胞ニッチ)により,その増殖や分化が制御されている.大腸幹細胞(Lgr5陽性細胞)は,他の組織と同様,周囲に存在する幹細胞ニッチを構成する細胞群から分泌されるWnt,R-spondin1,BmpやNotchリガンドなどの液性因子による制御を受ける.しかし,大腸組織が損傷を受けた際に,幹細胞ニッチを構成する細胞群が組織再生にどのような役割を果たすのかは不明である.本稿では,新たな幹細胞ニッチとして見いだされた間質細胞群が大腸組織の損傷を修復するメカニズムを解明した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) McCarthy N. et al., Nat. Cell Biol., 22, 1033-1041(2020).
    2) Wu N. et al., Nature, 592, 606-610(2021).
  • 武田 洸樹
    2022 年 58 巻 1 号 p. 66
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    イソフルランは麻酔深度を容易かつ迅速に制御でき,小児から成人まで幅広く使用されている吸入麻酔薬である.近年,イソフルランが発達期の脳において,記憶障害および学習障害を引き起こす可能性が示されている.
    しかし,イソフルランによる神経障害のメカニズムについては未だ明らかになっておらず,予防策も確立されていない.本稿では,細胞死の1つであるフェロトーシスがイソフルランによる海馬神経障害と記憶障害に寄与することを,マウスを用いて明らかにしたLiuらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) McCann M. E. et al., BMJ, online 9 December.2019, doi:10.1136/bmj.l6459.
    2) Liu P et al.,Cell Death Discov. 7, 72(2021).
    3) Jiang X. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 22, 266-282(2021).
    4) Dixon S. J. et al., Cell, 1060-1072(2012).
    5) Gao M. et al., Mol. Cell, 73, 354-363 e3(2019).
  • 小澤 知尋
    2022 年 58 巻 1 号 p. 67
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    核酸医薬品は,比較的容易に開発できるという利点がある一方,標的細胞内に吸収されにくく,体内で酵素により分解される性質を持つため,現状では注射剤としてのみ臨床で用いられている.しかし注射による投与は,痛みを伴い,血管迷走神経反射を起こすことがあるなど侵襲性が高いため,新たな投与経路の開拓は,核酸医薬品の製剤化において重要である.
    薬品を患部へ効率よく投与し,薬品の滞留性を向上させる方法として,体温に応答してゲル化する温度応答性ハイドロゲルが着目されており,オフロキサシンゲル化点眼液等がすでに臨床応用されている.さらに近年では,温度応答性ハイドロゲルに核酸医薬品を包含させる試みも報告されている.
    ハイドロゲルは,水分を多量に含むことから,創傷治癒過程における湿潤環境を提供することで,真皮細胞の接着・遊走・増殖および,組織の再上皮化を促進することが知られており,創傷治癒を目的とした製剤としての報告は多い.
    組織修復に関与するタンパクの1つであるマトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)は,その過剰発現により,難治性創傷である糖尿病性慢性創傷の治癒を妨げることも知られている.よって,核酸医薬品の1種であり,特定の遺伝子のmRNAの分解を起こし,ひいてはタンパク質の発現を抑制するsiRNAを用いてMMP-9遺伝子の発現を効果的に抑制することは,糖尿病性慢性創傷の治療において有用であると考えられる.
    そこで本稿では,MMP-9遺伝子に対するsiRNAを内包した温度応答性ハイドロゲル製剤の創傷治癒効果を検証したLanらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Yasuhiro F. et al., J. Ocul. Pharmacol Ther., 22, 258-266(2006).
    2) Lan B. et al., J. Nanobiotechnol., 19, 130(2021).
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談話室
  • 坂本 謙司
    2022 年 58 巻 1 号 p. 88_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/01
    ジャーナル フリー
    私が学生時代に受けた教えの中の1つに「剤」と「薬」の区別がある.「『剤』は主薬に添加物を加えて製剤化したものを指すが,基礎研究で用いるのは化合物そのものなので,例えば,学会抄録などにおいては『阻害剤』ではなく『阻害薬』と書くように」と指導された.元々の漢字の意味から考えて,私は化合物そのものを指す際には「○○薬」と書いていただきたいと考えているのだが,実際のところ,話はそんなに簡単ではない.例えば,有機化学で用いられる「酸化剤」は「酸化薬とは書かれない.これは英語の”agent”の和訳に「剤」を用いることからきているのではないかと思われるのだが,漢字の使い方1つとってみても,なかなか悩ましいものがある.
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