特定の遺伝子配列の削除や挿入を可能とするゲノム編集技術は近年目覚ましい進歩を遂げており,生命科学分野の発展に大きく寄与している.分子を基盤とする科学分野においても,分子骨格そのものをゲノムのように「編集」できる技術があれば,その有用性や発展性は計り知れない.最近Levinらはそのような変換を可能にする第一歩として,分子に含まれる窒素原子を「削除」する手法を報告したので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Kennedy S. H. et al., Nature, 593, 223-227(2021).
2) Glover S. A., Tetrahedron, 54, 7229-7271(1998).
3) Hinman R. L., Hamm K. L., J. Am. Chem. Soc., 81, 3294-3297(1959).