抄録
タンパク質の立体構造は,アミノ酸配列によって規定されるだけでなく,環境に応じて施される翻訳後修飾の影響も受ける.修飾がスイッチとして働き,立体構造の変化等を通じて活性が制御される.様々な翻訳後修飾の中でも酸化還元(レドックス)スイッチとして働くシステインのジスルフィド結合は有名であり,架橋を伴う制御スイッチとしては唯一のものであると考えられてきた.ところが,最近,Wensienらにより,リジンとシステインとの間に生じる酸素原子を介したN-O-S架橋がアロステリックなレドックススイッチとなることが報告されたので,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Wensien M. et al., Nature, 593, 460-464 (2021).
2) Matthews B. W., Protein Sci., 30, 1491-1492(2021).
3) Vanacore R. et al., Science, 325, 1230-1234(2009).