ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
トピックス
細胞周期調節因子サイクリンDの代謝破綻がもたらすがんの薬剤耐性化
德川 宗成
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 58 巻 3 号 p. 264

詳細
抄録

細胞周期は,細胞分裂に必須の過程であり,サイクリン依存性キナーゼCDKとサイクリンの複合体により緻密に制御される一方,その破綻はがんの発症要因となる.サイクリンDは代表的なサイクリン分子の1つで,CDK4/6と相互作用し,シグナル伝達カスケードの下流にある細胞周期抑制分子RB(retinoblastoma)タンパク質の不活性化を介して細胞周期の進行へと導く.このようにサイクリンDは,細胞周期制御の中心的レギュレーターであり,またヒトがんではその制御破綻が高頻度に見いだされている.ところが,サイクリンDが細胞内でどのように代謝されるかについては今日まで未解明であった.最近,このサイクリンD分解機構の中核を担う分子が複数のグループから報告され,サイクリンD代謝の新たな生物学的意義が明らかとなった.本稿では,Simoneschiらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Simoneschi D. et al., Nature, 592, 789-793(2021).
2) Freeman-Cook K. et al., Cancer Cell, 39, 1404-1421.e11(2021).

著者関連情報
© 2022 The Pharmaceutical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top