ファルマシア
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58 巻, 3 号
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目次
  • 2022 年 58 巻 3 号 p. 194-195
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    特集:小児の薬物療法を考える
    特集にあたって:添付文書に小児の効能・効果,用法・用量,および安全性や有効性に関する十分なデータが示されている医薬品は少ない.小児用医薬品の開発がなかなか進まない背景として,新生児から思春期までの広い年齢層が対象であり,医薬品の剤形や薬物動態等に関して年齢に応じた対応が必要であること,また臨床試験計画や同意取得等に小児特有の配慮が必要であること,さらに対象患者数が少ないことなどがあげられる.2019年に医薬品医療機器等法が改正され,小児の用法・用量が設定されていない医薬品等を「特定用途医薬品」等として指定し,優先審査等の対象とすることが明確化された.このような流れを機に,小児の薬物療法を考える特集を企画した.
    表紙の説明:小児の薬物療法において,成長と発達に伴う薬物動態の変化や飲みやすい剤形等を考慮した小児用医薬品の開発,そして,薬物治療が必要な小児やご家族への服薬支援は重要である.本特集号の表紙として,小児への服薬支援の場面,小児用医薬品の剤形,乳幼児から青少年への成長,そして,これらのイメージを前に小児の薬物療法について考える人物をデザインしていただいた.
オピニオン
  • 石川 洋一
    2022 年 58 巻 3 号 p. 193
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    日本の未来を担うのは小児である。人は「The First 1,000 Days」、つまり受精して細胞分裂を始めた時から、胎児、乳児を経て2歳となる1,000日の間に適切な栄養とケアを受けられれば、その後疾患に罹りにくく、成長と命が守られることが知られている。すなわち成人の健康を守るためにも、小児期の薬物療法は大きな価値を持つ。2018年に「成育基本法」が成立し、小児期医療の充実が求められている。薬学会においても小児期医療の推進のために、多くの医療者や研究者の参画を望む。
Editor's Eye
話題
話題
話題
話題
話題
最前線
最前線
  • 痛み・呼吸困難を中心に
    余谷 暢之
    2022 年 58 巻 3 号 p. 228-232
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    こどもを主語にして関わるアプローチを小児緩和ケアでは大切にする。こどもの症状緩和を考える際には、まずこどもの症状をどのようにとらえ、評価するかが重要となる。症状の訴えは年齢や発達段階によってさまざまであり、個別性が高い。チームで評価を共有することが大切になる。そして薬物療法を行う際には、こどもにも薬の効果と使い方について説明を丁寧に行うことで、自分ごととして対応できる力を育てることになる。
最前線
  • 江本 千恵, 米山 洸一郎
    2022 年 58 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    世界の小児人口は26.2%といわれている.しかし小児患者のために適切に評価され,適応を持つ医薬品は限られており,小児への使用が想定される医薬品について,小児集団における使用経験の情報の集積を図ること,そして成人適応の開発と並行して小児適応の開発を行うことへの必要性が高まっていた.2000年に,医薬品規制調和国際会議(ICH)における合意に基づき,「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス」(ICH-E11)が定められた.その後,新規医薬品開発に対して,欧州医薬品庁では第I相試験終了後に,米国食品医薬品局(FDA)では第III相試験開始前に,製薬企業は小児試験計画を規制当局に提出することが求められている.FDAからのガイダンス草案では,新生児および小児臨床試験の実施に関する臨床薬理的留意点についても述べられている.我が国においては,2019年に薬機法の改正が公布され,小児の用法・用量が設定されていない,医療上充足されていないニーズを満たす医薬品等は「特定用途医薬品」として,優先審査等の対象となることが法律上明確化された.
    小児医薬品開発における臨床薬理的な取り組みとして,至適用量・用法の見定め,臨床試験計画の最適化,試験結果の精査が挙げられる.規制当局より,この取り組みには,ファーマコメトリクスの活用が推奨されている.ファーマコメトリクスの基盤の1つは薬物動態であり,成人から小児への薬物動態予測には年齢に伴う成長と発達を考慮する必要がある.我が国では,小児医薬品の早期実用化に資するレギュラトリーサイエンス研究の一環として,研究班によって小児領域の医薬品開発におけるファーマコメトリクスの活用について検討され,リフレクションペーパーが公開されている.ここでは,小児集団の薬物動態や有効性・安全性成績の評価にファーマコメトリクスを活用した国内外の事例や今後の課題・展望が紹介されている.
    本稿では,小児集団で用いられる年齢,小児における薬物動態,そして小児医薬品開発におけるファーマコメトリクスの手法として,母集団薬物動態解析と生理学的薬物速度論(physiologically-based pharmacokinetic : PBPK)モデル解析について述べる.
最前線
速報 わだい
  • 金井 求
    2022 年 58 巻 3 号 p. 243
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    2021年11月29日から12月2日の4日間にわたり、アジア医薬化学連合(Asian Federation for Medicinal Chemistry: AFMC)の主催で、第13回AFMC International Medicinal Chemistry Symposium (AIMECS2021)がオンラインで開催された。日本を含む21か国からの参加者があり、大変実り多い学会であった。小林利彦先生(東大薬友会会長、AFMC創始者)、松木則夫先生(東大名誉教授、前AFMC president)、国嶋崇隆先生(金沢大)、および青木一真先生(第一三共)とともに本会の組織・実行に携わった者として、ここに開催報告をさせていただく。
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2022 年 58 巻 3 号 p. 245
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和3年12月24日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
新薬のプロフィル
  • 川田 洋充
    2022 年 58 巻 3 号 p. 246-247
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)は,四肢,体幹および呼吸筋の高度な脱力を引き起こす遺伝性の神経筋疾患で我が国では指定難病に定められている.
    SMAは,Survival Motor Neuron 1(以下SMN遺伝子の両対立遺伝子の機能喪失変異による常染色体劣性(潜性)遺伝疾患である.ヒトのSMN遺伝子には機能性SMNタンパク質が産生されるSMN1遺伝子と,産生されるSMNタンパク質の約90%が不完全長で分解されやすいSMN2遺伝子がある.
    本剤は,SMN2 pre-mRNAに作用し,完全長のSMN2 mRNAへのスプライシングを促進する.経口投与により全身に分布し,中枢神経系および全身の機能性SMNタンパク質を増加させることが期待される.
    我が国では,2つの国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験の成績から,「脊髄性筋萎縮症」治療剤として,2021年6月に製造販売承認を取得した.
承認審査の視点
承認審査の視点
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 田中 智博
    2022 年 58 巻 3 号 p. 258
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    近年,従来の低分子医薬品に代わり,ペプチド・タンパク質を基盤とした医薬品が注目されている.この発展を支えているのは,所望の薬理活性を有するペプチド・タンパク質の創製を可能にするペプチド合成化学の存在である.その中でも,アミド(ペプチド)結合を簡便かつ高純度に作る技術の開発は非常に重要である.
    ペプチド合成におけるアミノ酸のカップリング反応にはカルボジイミド系縮合剤が広く用いられているが,縮合時のラセミ化がしばしば問題になる.そのため,より収率良くペプチドを合成するためにはラセミ化の抑制が必須である.今回,Wangらはアレノンを用いたラセミ化を伴わないアミド結合形成反応を報告したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wang Z. et al., J. Am. Chem. Soc., 143, 10374-10381(2021).
    2) Hu L. et al., J. Am. Chem. Soc., 138, 13135-13138(2016).
  • 小嶋 良輔
    2022 年 58 巻 3 号 p. 259
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    抗がん薬はがん治療を行ううえで必須のツールだが,全身性投与に伴う毒性は大きな問題となる.この毒性を低減する手段として,抗がん薬の活性を何らかの保護基でマスクし,これをがん部位のみで活性化する「プロドラッグ抗がん薬」の利用が有用である.一方,直腸がん,肺がん,乳がんなどの治療では,化学療法とX線やガンマ線(以下X線のみ記載)を利用した放射線療法を同時に行うことで,単独治療よりもはるかに治療成績がよくなることが知られている.このことから,がん部位に限局して照射するX線によって抗がん薬を活性化することができれば,副作用の少ないがん治療が可能になることが期待される.本稿では,このようなX線によって活性化可能なプロドラッグ抗がん薬を報告した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Souza C. et al., Expert Rev. Anticanc., 19, 483-502(2019).
    2) Brunner T. B., Best Pract. Res. Clin. Gastroenterol., 30, 515-528(2016).
    3) Geng J. et al., Nat. Chem., 13, 805-810(2021).
  • 張 莉
    2022 年 58 巻 3 号 p. 260
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は日和見病原体であり,免疫不全患者には生命に関わる疾患を引き起こす.また,妊婦が感染すると,免疫が脆弱な胎児に重大な先天性疾患を引き起こす可能性がある.現在用いられている抗HCMV薬としては,核酸アナログ(ガンシクロビルとシドフォビル)や,非核酸アナログ(ホスカルネット)などがあるが,強い副作用と薬剤耐性株の出現が問題になっている.本稿では,中国に自生するマメ科植物ヒメエンジュから,抗HCMV活性を示すマトリン-アデニンハイブリッドを単離したZhangらの研究を紹介する.本研究でZhangらは,ドッキングシミュレーションを利用して抗HCMV活性を精度良く推測することに成功した.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhang Z. -J. et al., Phytochemistry, 190, 112842(2021).
    2) Ohyama M. et al., Tetrahedron, 37, 5155-5158(1996).
  • 和田 祐希
    2022 年 58 巻 3 号 p. 261
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    化学産業廃棄物の80%以上が有機溶媒に由来すると言われている.この問題を解決する1つの方法は,有機溶媒を使用しない化学合成であり,水中化学合成法の開発は重要な研究課題である.一般に,化学合成の基質や反応剤は疎水性化合物であり,水中での化学合成は困難である.しかし,水に界面活性剤を加えると,ミセルが形成され,このミセル中に基質や反応剤が集積することから,所望の反応が進行するようになる.
    ところで,有機物が環境に与える負荷指標の1つとして,「ドイツ水質危害クラス物質リスト(Wasser Gefahrdungs Klasse: WGK)」が知られている.WGKでは,有機物がクラス1,2,3に分類され,数字が大きくなるにつれて当該有機物の水生生物に与える危険性が大きくなる.
    これまでに使用された界面活性剤の中で,Lipshutzらが開発したDL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールコハク酸エステル(DL-α-Tocopherol methoxypolyethylene glycol succinate: TPGS-750-M)は最も汎用されている.しかし,TPGS-750-MはWGKクラス2に分類されるコハク酸ジエステル構造を有しており,TPGS-750-Mをそのまま排水として廃棄することができない.そこで今回,Lipshutzらは新しい界面活性剤DL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコール-ライト(DL-α-Tocopherol methoxy- polyethylene glycol-lite: TPG-lite)を設計・合成した.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lipshutz B. H. et al., Green. Chem., 16, 3660-3679(2014).
    2) Lipshutz B. H. et al., Tetrahedron, 87, 132090(2021).
    3) Lipshutz B. H. et al., Chem. Eur. J., 24, 6778-6788(2018).
    4) 水中反応でも,精製時に有機溶媒を使用することが多い.
  • 露木 貴浩
    2022 年 58 巻 3 号 p. 262
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連脊髄症/熱帯性痙性麻痺(HAM/TSP)は,HTLV-1感染者の一部(日本人の血清陽性者有病率0.25%)にのみ発症する慢性かつ進行的な中枢神経系の炎症性疾患である.これまでの研究により,体内のプロウイルス量(宿主細胞ゲノムに組み込まれたHTLV-1ゲノムの量)が増加すると,HAM/TSP発症リスクが高まることが知られている.しかし最近の研究では,必ずしも高いプロウイルス量を示す人だけが,HAM/TSPを発症するわけではないということがわかってきた.さらに血清HTLV-1陽性者のHAM/TSP有病率が,民族間で異なるという知見から,宿主の遺伝的背景の関与が示唆されるようになった.本稿では,大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)で見いだされたヒト白血球抗原(HLA)遺伝子の包括的な遺伝子型判定(ジェノタイピング)によって,特定のHLA対立遺伝子(アレル)とHAM/TSP発症に関連があることを明らかにした研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Treviño A. et al., J. Neurovirol., 206, 2551-2555(2013).
    2) Penova M. et al., PNAS., 118e2004199118(2021).
  • 伊藤 泰生
    2022 年 58 巻 3 号 p. 263
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    先天性筋無力症(congenital myasthenia: CM)は,神経筋接合部で働く分子の遺伝子変異による先天的な欠損および機能異常によって,筋力低下や易疲労性を示す疾患である.CMの原因遺伝子としては,docking protein 7(Dok7)やmuscle-specific kinase(MuSK)などが知られている.Dok7は,神経筋接合部の形成および維持の過程において,MuSKに結合し,MuSKのリン酸化を促進する.MuSKのリン酸化は,Dok7のC末端領域の2つのチロシン残基のリン酸化を誘発する.このリン酸化によって,CT10 regulator of kinase(CRK)がDok7と結合し,シナプスでの発現が増加する.その後,CRKを介して,アセチルコリン受容体がシナプス後膜に発現し,シナプスの形成・維持が為される. Dok7の最も一般的な変異は,4塩基対の重複であり,この変異では,C末端領域のチロシン残基が欠損した短縮型Dok7が発現する.本稿では,Dok7のC末端領域のチロシン残基の欠損に着目して,CMの発症機序を検証するとともに,MuSKアゴニスト抗体による治療効果を報告したOuryらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hallock P. T. et al., Genes Dev., 24, 2451-2461(2010).
    2) Cossins J. et al., Hum. Mol. Genet., 21, 3765-3775(2012).
    3) Oury J. et al., Nature, 595, 404-408(2021).
  • 德川 宗成
    2022 年 58 巻 3 号 p. 264
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    細胞周期は,細胞分裂に必須の過程であり,サイクリン依存性キナーゼCDKとサイクリンの複合体により緻密に制御される一方,その破綻はがんの発症要因となる.サイクリンDは代表的なサイクリン分子の1つで,CDK4/6と相互作用し,シグナル伝達カスケードの下流にある細胞周期抑制分子RB(retinoblastoma)タンパク質の不活性化を介して細胞周期の進行へと導く.このようにサイクリンDは,細胞周期制御の中心的レギュレーターであり,またヒトがんではその制御破綻が高頻度に見いだされている.ところが,サイクリンDが細胞内でどのように代謝されるかについては今日まで未解明であった.最近,このサイクリンD分解機構の中核を担う分子が複数のグループから報告され,サイクリンD代謝の新たな生物学的意義が明らかとなった.本稿では,Simoneschiらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Simoneschi D. et al., Nature, 592, 789-793(2021).
    2) Freeman-Cook K. et al., Cancer Cell, 39, 1404-1421.e11(2021).
  • 横山 雄太
    2022 年 58 巻 3 号 p. 265
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    新規抗菌薬の開発は年々減少傾向にあることから,薬剤耐性菌への対策が重要視されている.1996年に我が国でバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci: VRE)が初めて検出されて以降,2005年の京都をはじめ,数年に1件程度のアウトブレイク事例が報告されている.現時点においてVRE治療薬はリネゾリド等に限られているが,近年漢方薬がVRE治療に対する新たな治療戦略として注目されている.
    漢方薬には腸管免疫を促進する作用を示すものや,プロバイオティクスの効果を増強するものがあり,感染症治療における有用性が期待される.体力低下,疲労倦怠感,食欲不振などに伝統的に用いられる漢方薬である補中益気湯(HET)は,宿主の免疫機能賦活作用による感染防御作用も併せ持つことから,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA)感染に対する作用が検討されてきた.例えばMRSA感染モデルマウスにHETを投与することで生存期間が延長したとの報告や,患者に10週間HETを投与することで尿中MRSAを有意に減少させたとの報告がある.一方,プロバイオティクスの投与がVRE除菌に有用であったとの報告もあるが,HET等の漢方薬やプロバイオティクスのVREに対する効果に関するエビデンスは限られている.本稿では,VREに対するHETの有用性およびプロバイオティクスの併用効果について検討した臨床研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Matsui K. et al., Kampo Med., 48, 357-367(1997).
    2) Nishida S., J. Infect. Chemother., 9, 58-61(2003).
    3) Szachta P. et al., J. Clin. Gastroenterol., 45, 872-877(2011).
    4) Kohno J. et al., Sci. Rep., 11, 11300(2021).
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