抄録
近年の薬剤耐性菌の爆発的な出現により,新たな抗菌剤の発見・開発が求められ続けている.しかしながら,既知化合物やその類縁体の再発見率が極めて高い現代の天然物探索研究において,構造的に新しい抗菌剤リードの探索コストは著しく増加している.このような状況から,新たな天然物探索戦略もまた必要とされている.本稿では,微生物間相互作用に注目した天然物探索により,新規抗真菌性リポペプチド「キアヌマイシン」を発見した報告について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Götze S. et al., J. Am. Chem. Soc., 145, 2342–2353(2023).
2) Arp J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 115, 3758–3763(2018).