2023 年 59 巻 7 号 p. 659-663
カーボンナノチューブ(CNT)は、アスベストに類似する性質から呼吸器の慢性毒性が疑われてきた。ラットを用いた腹腔内投与や気管内投与による発がん性評価から、中皮腫の誘発性は繊維の形状に依存する一方、肺腫瘍の誘発については肺胞マクロファージによるクリアランスの低下が主要因と示唆された。多種のCNTについて慢性吸入試験を実施するのは困難であるため、気管内投与による慢性試験が有効と考えられるが、吸入との比較検討は十分ではなく更なる研究が必要である。