ファルマシア
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59 巻, 7 号
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目次
  • 2023 年 59 巻 7 号 p. 622-623
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル フリー
    特集:ナノマテリアルの最前線と安全性
    特集にあたって:日常生活の様々なところでナノマテリアルが利用され始めている.ナノマテリアルのメリットはナノスケールの粒子サイズにあり,細胞内への移行性や吸収性のほか,その大きな比表面積により,様々な素子の搭載や高性能化などが可能である.しかしながら,ナノマテリアルの安全性についてはほとんど調査されておらず,既に日常生活に浸透しているものも含めて安全性を評価することが喫緊の課題となっている.本特集号では,ナノマテリアルの最先端技術を紹介するとともに,安全性とその周辺に関する取り組みについて考えてみたい.
    表紙の説明:100nm以下の大きさの素材であるナノマテリアルは,既に我々の生活のなかに広く浸透している.日常生活,環境維持,健康管理などに使用されている精密機器類のほかに,食品,化粧品,医薬品など生体内に取り込まれるものまで,その応用範囲は幅広い.リポソームやハイドロゲルのような技術は,従来とは異なる新たな医療技術の発展につながることが期待されている.
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
  • 大野 彰子
    2023 年 59 巻 7 号 p. 629-633
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    「ナノマテリアル」という新たな特性や機能を持つ製品の開発は、世界的な市場規模において多くの分野での利活用が期待されている。さらに、ナノマテリアルの需要は年々増加傾向にあり、国内外で消費者の日常生活に幅広く浸透している。国際的にはナノマテリルの曝露によるヒトへの健康影響への懸念からリスク評価の必要性の高まりを受けて、現在、欧米を中心としたナノマテリアルの規制に向けたテストガイドラインやガイダンス文書の策定が進められている。
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
  • 新規in vitro生体模倣評価系の開発
    戸塚 ゆ加里
    2023 年 59 巻 7 号 p. 654-658
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    汎用されているin vitro/ in vivo遺伝毒性試験を応用し、ナノマテリアルの有害性について検討を行なってきた。その結果、ナノマテリアルは慢性炎症を介して遺伝毒性を誘発することが示唆された。このメカニズムを基盤とし、細胞間相互作用を考慮した生体模倣システムとして、肺由来の細胞と免疫系細胞との共培養試験系を確立した。本特集では、我々のこれまでの毒性評価データを紹介するとともに、生体を模倣した新規試験法の展望についても考察する。
最前線
  • ラット慢性試験によるカーボンナノチューブの発がん性評価
    北條 幹, 坂本 義光, 前野 愛
    2023 年 59 巻 7 号 p. 659-663
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    電子付録
    カーボンナノチューブ(CNT)は、アスベストに類似する性質から呼吸器の慢性毒性が疑われてきた。ラットを用いた腹腔内投与や気管内投与による発がん性評価から、中皮腫の誘発性は繊維の形状に依存する一方、肺腫瘍の誘発については肺胞マクロファージによるクリアランスの低下が主要因と示唆された。多種のCNTについて慢性吸入試験を実施するのは困難であるため、気管内投与による慢性試験が有効と考えられるが、吸入との比較検討は十分ではなく更なる研究が必要である。
セミナー
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2023 年 59 巻 7 号 p. 669
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和5年4月28日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
  • 山﨑 由貴
    2023 年 59 巻 7 号 p. 677_2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    初めてピペットを握った日から、瞬く間に15年が経った。その間、医薬品・食品・化粧品に含まれる様々な化学物質の分析をライフワークとしてきたが、何よりも困惑したのは、対象物質や試料によってバリデーションのクライテリアが異なることであった。なぜ統一してくれないのかと頭を抱える一方で、複数分野で分析に取り組んだ経験が思いのほか役立つこともあり、分析におけるFit for Purposeの重要性について、身をもって実感してきたように思う。
トピックス
  • 姜 法雄
    2023 年 59 巻 7 号 p. 678
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    アルケンの酸化的開裂反応には,高価な装置や高毒性で爆発性のあるオゾン,医薬品への混入が忌避されるオスミウムやマンガン等の重金属を用いる必要があったため,それらを用いない方法が求められていた.最近Ruffoniらは,光によって励起されたニトロアレーンを用いるアルケンのカルボニル化合物への実用的な変換プロセスを確立したので本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ruffoni A. et al., Nature, 610, 81–86(2022).
    2) Buchi G., Ayer D. E., J. Am. Chem. Soc., 78, 689–690(1956).
    3) Charlton J. L. et al., J. Am. Chem. Soc., 93, 2463–2471(1971).
  • 武藤 慶
    2023 年 59 巻 7 号 p. 679
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    RNAからタンパク質への翻訳は,最も主要な生物活動の1つである.細胞成長,可塑性,そして分化に必要不可欠であり,がん細胞,病原ウイルス,記憶形成などで,特に活発に翻訳がなされる.ピューロマイシンは,翻訳研究のツールとして用いられる翻訳阻害分子の1つである.この分子はリボソームの翻訳サイトに入り込み,伸長中のペプチド末端と共有結合を形成して翻訳を停止させる.その後,翻訳途中のペプチドはピューロマイシン結合ペプチドとして放出される.今回Koらは,可逆的な光応答で翻訳阻害活性を調整可能なピューロマイシン誘導体を合成した. 本稿では,ピューロスイッチ(puroswitch)と名付けられたこの分子について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ko T. et al., J. Am. Chem. Soc., 144, 21494–21501(2022).
    2) Buhr F. et al., Angew. Chem., Int. Ed., 54, 3717–3721(2015).
    3) Elamri I. et al., J. Am. Chem. Soc., 143, 10594–10603(2021).
  • 小栗 志織
    2023 年 59 巻 7 号 p. 680
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    生薬の網羅的な成分分析・解析は,多成分系における作用や副作用の解明を目的として,これまで多くの研究者が取り組んできたテーマである.近年の分析技術の発展によって,高分解能LC/MSを用いた生薬分析事例が報告されるようになった.しかし,数十~数百の成分を全て同定し,各成分を1つずつ薬理評価することは非常に困難である.このことから,理想とする網羅的な解析に適う実現可能な手法が,現在もなお模索されている.また,中薬の副作用の1つとして肝毒性が問題となっているが,その発症の31.8%は生薬カシュウに起因するとの報告があり,原因物質や副作用発現機構の解明に興味が持たれる.Songらは,カシュウの肝毒性に関与する成分の解明を目的として,LC/MSによる多成分一斉分析,多変量解析による候補成分の選定,選定成分の活性評価,成分分析と活性の相関解析を行った. 統計解析の活用によって戦略的に副作用原因物質の評価を進めた点は非常に興味深く,他の生薬や成分にも応用可能であると考えられることから,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wang R. et al., Expert Rev. Gastroenterol. Hepatol., 12, 425–434(2018).
    2) Song Y. et al., Front. Pharmacol., 13, 935336(2022).
    3) Liu Y. et al., Front. Pharmacol., 9, 364(2018).
    4) Hu X. et al., J. Ethnopharmacol., 298, 115620(2022).
  • 石井 亮平
    2023 年 59 巻 7 号 p. 681
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    一般的に低分子薬は,標的タンパク質(protein of interest: POI)の活性部位や基質結合部位に特異的に結合し,その活性を阻害することで薬理効果をもたらす.その一方,明確な結合部位が存在せず,アンドラッガブルとされているPOIも多く存在する.このような標的をユビキチン・プロテアソーム系を用いて分解するタンパク質分解誘導薬が,新規モダリティとして注目を集めている.その1つにE3リガーゼとPOIに同時に結合して複合体形成を安定化するモレキュラーグルーが挙げられる.セレブロンE3リガーゼモジュレーター(CRBN E3 ligase modulatory drug: CELMoD)はCRL4 E3リガーゼの基質認識タンパク質セレブロン(CRBN)に結合し,POIをネオ基質として分解誘導を促進するモレキュラーグルーである.本稿では,CELMoDが誘導する構造変化が薬理作用に重要であることを,クライオ電子顕微鏡を用いて解明した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Watson E. R. et al., Science, 378, 549–553(2022).
    2) Chamberlain P. P. et al., Nat. Struct. Mol. Biol., 21, 803–809(2014).
  • 高橋 美裕
    2023 年 59 巻 7 号 p. 682
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    Messenger RNA(mRNA)ワクチンの技術は,新型コロナウイルス感染症の予防接種として応用されたことから,我々の生活に馴染み深いものとなった.がん領域では,mRNAがんワクチンの開発が進められており,がん患者の体内に存在するがん細胞を体液性および細胞性免疫によって除去または減少させる効果が期待されている.mRNAを脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle: LNP)で内包することで,mRNAの安定性向上および細胞内への送達が可能となる.一方,静脈または筋肉内投与すると主に肝臓で抗原が発現することにより,肝毒性がみられるため,標的組織への送達性が課題である.本稿では,副作用を減らして免疫応答を増強するために,リンパ節標的特異性を有するLNPを探索し,mRNAがんワクチンに適用することで,動物モデルにおいて持続的な優れた治療効果を示した報告について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lei Y. et al., Pharmaceutics, 14, 2682(2022).
    2) Marks A. et al., Curr. Issues Mol. Biol., 44, 1115-1126(2022).
    3) Jinjin C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 119, e2207841119(2022).
    4) Min Q. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 118, e2020401118(2021).
  • 合田 光寛
    2023 年 59 巻 7 号 p. 683
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    国際糖尿病連合(IDF)が発表した「IDF糖尿病アトラス」第10版によると,糖尿病の有病率は10.5%に達し,成人の10人に1人が罹患している.それに伴い,糖尿病の主要な合併症である糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease: DKD)の罹患率も増加している.DKDは,糖尿病患者の約40%が罹患し,腎不全の主な原因となっているため,現在の標準的な治療法である厳格な血糖コントロールによる腎機能障害の抑制に加え,DKDを対象とした新たな治療法の開発が必要とされている.
    糸球体上皮細胞であるポドサイトを含む腎常在細胞におけるNLRP3インフラマソームの活性化が,マウスのDKDを促進することが報告されている.糸球体の濾過障壁であるポドサイトの機能不全がDKD発症と関連していることは明らかになっているが,ポドサイトにおけるNLRP3インフラマソームの活性化がDKDにどのように関与しているかは不明であった.本稿では,3種類のコンディショナルノックアウトマウスを用いて,DKDの進展におけるポドサイトのNLRP3インフラマソームの重要性を明らかにしたShahzadらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Shahzad K. et al., Kidney Int., 87, 74-84(2015).
    2) Shahzad K. et al., Kidney Int., 102, 766-779(2022).
    3) Kim Y. G. et al., Cells. 8, 1389(2019).
  • 山田 裕太郎
    2023 年 59 巻 7 号 p. 684
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    結核は結核菌によって引き起こされ,現在でも世界の年間死亡者数が約150万人に上る疾患である.結核菌はエフェクター分子を用いて宿主に高い感染力を発揮しており,ファゴソームなどを阻害することで細胞内へ侵入する. 一方,細胞に侵入した結核菌がどのように免疫を回避しているかは,ほとんど解明されていない.通常,細菌が細胞へ侵入すると細菌の構成成分が受容体によって感知され,これらの受容体を含むタンパク質複合体「インフラマソーム」が形成・活性化される.それに伴い,細胞膜の崩壊を伴うプログラム細胞死であるピロトーシスが惹起され,IL-1βなどの炎症性サイトカインが細胞外へ放出されることで免疫が活性化される.本稿では,結核菌のエフェクター分子protein tyrosine phosphatase B(PtpB)がピロトーシスを抑制する機構を報告したChaiらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Vergne I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 102, 4033-4038(2005).
    2) Vergne I. et al., J. Immunol., 198, 653-659(2003).
    3) Chai Q. et al., Science, 378, 6616(2022).
  • 松岡 順子
    2023 年 59 巻 7 号 p. 685
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    てんかん治療の基本は薬物療法であり,妊娠可能な女性が抗てんかん薬を服用していることは少なくない.妊娠中の抗てんかん薬服用による児への影響については催奇形性だけでなく,神経発達に対する長期的な影響が報告されている.てんかん診療ガイドライン2018では,「妊娠が予想される場合の抗てんかん薬は可能な限り単剤投与を目指す.また,薬剤選択にあたっては発作抑制効果の判断のみでなく,催奇形性リスクや認知機能障害発現リスクなどにも十分留意した薬剤選択を行い,服用量の調整にも注意する.」と記載されている.これまで,バルプロ酸ナトリウム(VPA)の胎内曝露が,出生児の自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)発症率上昇につながることは明らかになっているが,その他の抗てんかん薬に関する報告は少ない.本稿では,VPAと他の抗てんかん薬の胎内曝露による神経発達障害との関連性を示した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 日本神経学会,“てんかん診療ガイドライン”,「てんかん診療ガイドライン」作成委員会編,医学書院,東京,2018,pp. 136–137.
    2) Christensen J. et al., JAMA, 309, 1696–1703(2013).
    3) Bjørk M. H. et al., JAMA neurology, 79, 672–681(2022).
賞・研究奨励・助成
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