国際糖尿病連合(IDF)が発表した「IDF糖尿病アトラス」第10版によると,糖尿病の有病率は10.5%に達し,成人の10人に1人が罹患している.それに伴い,糖尿病の主要な合併症である糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease: DKD)の罹患率も増加している.DKDは,糖尿病患者の約40%が罹患し,腎不全の主な原因となっているため,現在の標準的な治療法である厳格な血糖コントロールによる腎機能障害の抑制に加え,DKDを対象とした新たな治療法の開発が必要とされている.
糸球体上皮細胞であるポドサイトを含む腎常在細胞におけるNLRP3インフラマソームの活性化が,マウスのDKDを促進することが報告されている.糸球体の濾過障壁であるポドサイトの機能不全がDKD発症と関連していることは明らかになっているが,ポドサイトにおけるNLRP3インフラマソームの活性化がDKDにどのように関与しているかは不明であった.本稿では,3種類のコンディショナルノックアウトマウスを用いて,DKDの進展におけるポドサイトのNLRP3インフラマソームの重要性を明らかにしたShahzadらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Shahzad K.
et al.,
Kidney Int.,
87, 74-84(2015).
2) Shahzad K.
et al.,
Kidney Int.,
102, 766-779(2022).
3) Kim Y. G.
et al.,
Cells.
8, 1389(2019).
抄録全体を表示