ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
トピックス
レジスタンス運動によるストレス誘発性不安およびうつ様行動の改善
柴垣 郁弥
著者情報
ジャーナル 認証あり

2023 年 59 巻 8 号 p. 777

詳細
抄録

大うつ病性障害(Major Depression Disorders: MDD)は,ストレスが原因で発症し,不安や抑うつが引き起こされる精神神経疾患である.MDDの治療には抗うつ薬が使用されるが,奏効率が低いため,非薬物療法や予防法が研究されている.なかでも,適度な運動は多くの病気の発症を防ぐことから,運動によるMDDの改善が着目されている.運動は有酸素運動とレジスタンス運動(Resistance Training: RT)に大別され,RTは有酸素運動と比較して強い負荷を筋肉にかける運動である.不安や抑うつに対する有酸素運動の効果に関する報告は多くあるが,RTの効果はほとんど解明されていない.MDDの発症には,ストレスによる視床下部―下垂体―副腎皮質(Hypothalamic–Pituitary–Adrenal: HPA)系の活性化.神経炎症反応や神経栄養因子の脳由来神経栄養因子 (Brain-derived neurotrophic factor: BDNF)とその受容体であるTropomyosin receptor kinase B(TRκB)経路の関与が示唆されている.また,RTはToll-like receptorの発現低下を介した抗炎症作用を発揮するが,有酸素運動は炎症反応を誘発する.したがって,不安や抑うつに対してRTは有酸素運動よりも有効な可能性がある.本稿では,拘束や水泳,ラット糞尿存在下での飼育によるストレスに曝露させたマウスでみられる不安や抑うつに対するRTの効果およびそのメカニズムについて報告したJungらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Guedes J. M. et al., Einstein(Sao Paulo), 18, eAO4784(2019).
2) Hofmann J. et al., Psychoneuroendocrinology., 129, 105242(2021).
3) Park B. et al., J. Med. Food., 24, 299–309(2021).
4) Cavalcante P. A. M. et al., Sports Med. Open, 3, 42(2017).
5) Jung J. T. K. et al., Mol. Neurobiol., 60, 264-276(2023).

著者関連情報
© 2023 The Pharmaceutical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top