ファルマシア
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59 巻, 8 号
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目次
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
  • 重本 和宏
    2023 年 59 巻 8 号 p. 715-719
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    難病に指定されている重症筋無力症 (myasthenia gravis : MG)は診断技術や治療法の普及に伴い死亡例や重症例は減少したが、長期的な寛解はまれで患者のhealthy-related quality of life (QOL)は健常人に比べて低い. 近年、重症筋無力症の新しい治療薬が次々と開発されて有効性が示されてはいるが、いずれも免疫システムを標的としており根治治療法とは言い難い. 重症筋無力症の自己抗原はアセチルコリン受容体 (AChR)とmuscle-specific kinase(MuSK)であるが、抗原産生および免疫系の感作のメカニズムは全くわかっていない. 本稿では最新の知見を紹介する.
最前線
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最前線
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研究室から
  • 古田 巧
    2023 年 59 巻 8 号 p. 745-747
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    電子付録
    筆者の研究室では,触媒官能基の空間的な配置をいかにコントロールするかに興味を持っており,その方法としてカルコゲン結合を利用する触媒構造の制御に取り組んでいる.本稿では触媒開発における官能基配置の重要性を改めて認識し,問題意識を持つきっかけとなったアニリン性酸塩基触媒の開発とカルボキシラートイオンを持つ 4-dimethylaminopyridine (DMAP) 触媒の創製研究を紹介する.その後,カルコゲン結合を活用した触媒構造の制御に関する現在の取り組みについて述べる.
話題
話題
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2023 年 59 巻 8 号 p. 758-761
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,59巻6号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
最終講義
留学体験記 世界の薬学現場から
アメリカ薬学教育の現場から
  • 藤原 亮一, ベルチャー フェイス
    2023 年 59 巻 8 号 p. 766-767
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    日本の薬学教育は、特に6年制になってからはアメリカのものと似たものであると認識していた。しかし、2019年に異動しアメリカの薬学教育に直接携わるようになってからというもの、筆者は日米間での薬学教育の違いを目の当たりにする日々が続いている。そこで本コラムでは、アメリカ薬学部にて教鞭をとる立場から、アメリカの薬学教育、日本での薬学教育との違い、またそれぞれの特色について筆者が感じ取ったことをシリーズで伝える。アメリカでは、10か月間 (4週間 ×10か所の合計1,600時間) に及ぶAdvanced Pharmacy Practice Experiences (APPE)と呼ばれる実務実習が、カリキュラムに組まれている。APPEは病院実習や薬局実習などの必修実習と、それ以外の選択実習からなる。今回のコラムでは、ambulatory care clinicにおける病院実習の様子を、ノースイースト医科大学薬学部の4年生 (P4) が伝える。
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
トピックス
  • 池田 朱里
    2023 年 59 巻 8 号 p. 772
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    生物学的に重要なN-グリコペプチドの合成法として,固相合成法による直線的な手法およびフラグメントを用いた収束的な手法が確立されている.しかし前者では,大過剰量のN-グリコシル化アスパラギンを必要とし,固相からの切り出しに用いる酸条件にグリコシド結合が耐えられないという欠点がある.後者は特定残基の選択的活性化が困難であり,アスパルチミド形成反応が併発する点が課題である(図1A).今回,これらを克服する方法として,チオアミドを利用した部位特異的な活性化を用いた糖ペプチドの効率的な合成法がTareshらにより報告されたので,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Taresh A. B., Hutton C. A., Angew. Chem. Int. Ed., 61, e202210367(2022).
    2) Pourvali A. et al., Chem. Commun., 50, 15963–15966(2014).
  • 黒原 崇
    2023 年 59 巻 8 号 p. 773
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    タンパク質リジン残基のアセチル化は,特に核内タンパク質であるヒストンに対して活発に行われており,アセチル化を担うヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT),脱アセチル化を担うヒストンデアセチラーゼ(HDAC)のバランスによって制御される.また,アセチル化されたリジン残基(Kac)は,ブロモドメインタンパク質(BRD)などにより読み取られ,遺伝子の発現が制御されている.アセチル化の影響を解明する研究においては,Kac残基の変異導入が想定される.しかしながら,KacはHDACなどにより分解されることから,替わりにグルタミンやBoc-リジン(KBoc)などの利用が検討されてきたが,BRDを標的とする場合にはKacの模倣構造としてこれらの非天然残基が認識されないことが課題であった.本稿では,BRDが認識可能な,非天然アミノ酸の開発研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) I. Ali et al., Chem. Rev., 118, 1216–1252(2018).
    2) S. Kirchgäßner et al., Angew. Chem. Int. Ed., e202215460(2023).
    3) J. M. Kavran et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 104, 11268–11273(2007).
  • 髙橋 朔良
    2023 年 59 巻 8 号 p. 774
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは我々の社会生活を激変させたが, 生薬がその解決の糸口となる可能性がある.中国では,COVID-19の予防と治療に「三薬三方(3つの薬と3つの方剤)」が用いられている.紅花は,発熱や気管支炎等の諸症状の治療に用いられる生薬であり,三薬の1つである血必净注射液の主原料である.サフラン(番紅花)にも同様の作用があるが,両者のCOVID-19治療への寄与は未解明である.本稿では,ネットワーク解析を用いてCOVID-19治療に対する両生薬の作用機序を検討したMadikyzyらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Madikyzy M. et al., Sci. Rep., 12, 14296(2022).
    2) Ru J. et al., J. Cheminf., 6, 13(2014).
    3) Pillaiyar T., Laufer S., J. Med. Chem., 65, 955-982(2022).
  • 山田 創太
    2023 年 59 巻 8 号 p. 775
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    自己組織化による分子構造の変化は,細胞内外で重要な役割を果たしている.例えば,DNAの複製や転写,タンパク質のフォールディングや受容体認識など,様々な生体機能が非共有結合性の相互作用によって制御されている.近年,自己組織化によってナノサイズの構造体が生体内で多く生じていることに着想を得て,特定の刺激に応答して自己組織化する超分子の開発が盛んになっている. 例えば,活性酸素種や酵素に応答して形態変化するナノ粒子を用いて,生体機能を制御できることが実証されている.しかし,生きた細胞において時空間的に高い精度で自己組織化させることは,依然として大きな課題であった.本稿では,Sunらにより報告された,光に応答して形態変化する自己組織化ペプチドを紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Li F. et al., Adv. Mater, 29, 1605897(2017).
    2) Cheng D. -B. et al., J. Am. Chem. Soc., 14, 7235-7239(2019).
    3) Song Y. et al., J. Am. Chem. Soc., 144, 6907-6917(2022).
    4) Sun S. et al., ACS Nano, 16, 18978–18989(2022).
  • 森田 明広
    2023 年 59 巻 8 号 p. 776
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    脳オルガノイド(forebrain organoid: FBO)は神経系の発生過程を再現したもので,種々の疾患モデルを提供している.アルツハイマー病(Alzheimer disease: AD)は老人斑(アミロイド斑)と神経原繊維変化を2大主徴とする神経変性疾患である.これまで,家族性AD患者のiPS細胞から作製したFBO(AD-FBO)で,アミロイドβ(Aβ)ペプチド(特に42アミノ酸残基のAβ42)が凝集して細胞外に沈着したアミロイド斑などのAβ病変が再現された.一方,神経原繊維変化を構成するリン酸化されたタウタンパク質は検出できたが,その凝集体そのものは再現できなかった.本稿では,プロトコルの改良によってiPS細胞から効率的にFBOを作製し,FBOにタウ変異遺伝子を発現させることでタウ病変モデルを作製した研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Sdhaye J., Knoblich J. A., Cell Death Differ., 28, 52-67(2021).
    2) Raja W. K. et al., PLoS ONE, 11, e0161969(2016).
    3) Gonzalez C. et al., Mol. Psychiatry, 23, 2363-2374(2018).
    4) Shimada H. et al., Cell Rep. Methods., 2, 100289(2022).
  • 柴垣 郁弥
    2023 年 59 巻 8 号 p. 777
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    大うつ病性障害(Major Depression Disorders: MDD)は,ストレスが原因で発症し,不安や抑うつが引き起こされる精神神経疾患である.MDDの治療には抗うつ薬が使用されるが,奏効率が低いため,非薬物療法や予防法が研究されている.なかでも,適度な運動は多くの病気の発症を防ぐことから,運動によるMDDの改善が着目されている.運動は有酸素運動とレジスタンス運動(Resistance Training: RT)に大別され,RTは有酸素運動と比較して強い負荷を筋肉にかける運動である.不安や抑うつに対する有酸素運動の効果に関する報告は多くあるが,RTの効果はほとんど解明されていない.MDDの発症には,ストレスによる視床下部―下垂体―副腎皮質(Hypothalamic–Pituitary–Adrenal: HPA)系の活性化.神経炎症反応や神経栄養因子の脳由来神経栄養因子 (Brain-derived neurotrophic factor: BDNF)とその受容体であるTropomyosin receptor kinase B(TRκB)経路の関与が示唆されている.また,RTはToll-like receptorの発現低下を介した抗炎症作用を発揮するが,有酸素運動は炎症反応を誘発する.したがって,不安や抑うつに対してRTは有酸素運動よりも有効な可能性がある.本稿では,拘束や水泳,ラット糞尿存在下での飼育によるストレスに曝露させたマウスでみられる不安や抑うつに対するRTの効果およびそのメカニズムについて報告したJungらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Guedes J. M. et al., Einstein(Sao Paulo), 18, eAO4784(2019).
    2) Hofmann J. et al., Psychoneuroendocrinology., 129, 105242(2021).
    3) Park B. et al., J. Med. Food., 24, 299–309(2021).
    4) Cavalcante P. A. M. et al., Sports Med. Open, 3, 42(2017).
    5) Jung J. T. K. et al., Mol. Neurobiol., 60, 264-276(2023).
  • 藤野 智恵里
    2023 年 59 巻 8 号 p. 778
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    前立腺がんは,男性が発症する悪性腫瘍のなかで最も罹患数が多く,基本的には男性ホルモン(アンドロゲン)がアンドロゲン受容体(AR)に作用することで発症・進行する.これまでの研究で,アンドロゲンを代謝し不活性化する酵素であるuridine 5'-diphosphateグルクロン酸転移酵素(UGT)2B28の遺伝子発現が低い前立腺がん患者では,全摘除術後の再発率が高いことが示唆された.このメカニズムとして,UGT2B28によるアンドロゲン代謝の抑制が考えられる.一方で,相反する現象として,前立腺がん細胞においてUGT2B28の発現が増加し,その増加ががんの進行と正に相関することが示された.また,アンドロゲン非依存的な去勢抵抗性前立腺がんにおいてもUGT2B28とがんの進行との関係が示唆されることから,アンドロゲン代謝のみではUGT2B28の発現増加とがんの進行との関係について説明できない.Lacombeらは,UGT2B28の発現増加が前立腺がんの進行に及ぼす影響を明らかにし,そのメカニズムとして,アンドロゲンの代謝酵素としてではないUGT2B28の新たな機能について報告したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Belledant A. et al., Eur. Urol., 69, 601–609(2016).
    2) Lacombe L. et al., Cancer Lett., 553, 215994(2023).
    3) Shelton J. F. et al., Nat. Genet., 54, 121–124(2022).
  • 杉本 涼佳
    2023 年 59 巻 8 号 p. 779
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    心不全とは,心ポンプ機能の代償機構が破綻した結果,呼吸困難や浮腫を生じ,運動耐容能が低下する臨床症候群と定義される.心不全は,左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)により3種類に分類されるが,LVEFの低下率と予後の関係性は明らかにされていない.Sodium–glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は,浸透圧性利尿作用や心筋線維化予防への二次的作用を持つため,近年,心不全治療に使用されている.SGLT2阻害薬のダパグリフロジンは,heart failure with reduced ejection fraction(HFrEF; LVEF≦40%)において,心不全による入院や心血管死のリスクを減少させることが報告されている.一方,LVEFが40〜50%に低下した心不全(heart failure with mid-range ejection fraction: HFmrEF)または50%以上の心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)に対する薬物治療は,明確に定義されておらず,個々の病態に応じて判断するとされている.本稿では,ダパグリフロジンがHFmrEFおよびHFpEFに対し,心不全の悪化,心血管死のリスクを軽減させたDELIVER試験を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 2021年JCS/JHFS ガイドラインフォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療
    2) McMurray JJV et al., N. Engl. J. Med., 381, 1995-2008(2019).
    3) Solomon SD et al., N. Engl. J. Med., 387, 1089-1098(2022).
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