2024 年 60 巻 3 号 p. 237
病原体に汚染された食品や飲料を摂取することで引き起こされる細菌性食中毒は,WHO報告書(2015年)および世界銀行報告書 (2019年)によると,世界で年間6億件発生し,死者は40万人以上,経済的損失は1,000億ドルを超える.これらの被害を抑えるには,汚染された食品を流通の初期段階で検出し,取り除くための迅速かつ高感度な病原体分析が求められる.本稿では近年注目を浴びている人工知能(artificial intelligence: AI)を活用し,顕微鏡画像から同時に複数の標的細菌を多重検出するSMART(sensing method using artificial intelligence transcoding)法を構築したFengらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) World Health Organization. Food safety; 2022. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/food-safety.
2) Feng N. et al.,Anal. Chem., 95, 8649–8659(2023).
3) Viswanathan S. et al., Talanta, 94, 315–319(2012).
4) Li L. et al., Anal. Biochem., 608, 113854(2020).