ファルマシア
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60 巻, 3 号
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目次
  • 2024 年 60 巻 3 号 p. 170-171
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー
    特集:現在の日本の先進医療
    特集にあたって:2023年12月1日現在,先進医療Aとして28種類,先進医療Bとして52種類が先進医療の技術として登録されている.言葉はよく耳にするが,先進医療制度のことをどこまで理解しているだろうか?先進医療は,厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つとされており,健康保険法等の一部を改正する法律において,きちんと定義されている.また,先進医療について知っておくことで,いざという時に役立つ.本特集では,現在の日本の先進医療制度そのものの概要についてのコラムと,いくつかの技術に関連する最新のトピックスについてピックアップした.この機会に,現在の日本の先進医療に改めて目を向けてみてはどうだろうか.
    表紙の説明:2006年より現行の制度となった先進医療制度.これまで,がんやアルツハイマー病など様々な疾患に対する高度な医療(治療/診断)技術が,先進医療として認められてきた.そのリストは随時更新されている.先進医療は,厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つであり,施設基準に該当する保険医療機関(病院等)では,届出により保険診療との併用が可能である.これらの先進医療を受ける際は,先進医療にかかる費用は患者が全額自己負担することになるが,民間保険の特約では保障の対象となり得ることもある.
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
セミナー
セミナー
  • 先進医療Bを開始するまでの進め方とコツ
    岩崎 幸司
    2024 年 60 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    電子付録
    先進医療は, 保険未収載の医療技術を医療技術自体の安全性と有効性を示すことができること, 既存の医療技術(標準治療)と比較して, 相対的な安全性および有効性を示すことができることならびに日本国内での普及性を見込めることの3つの条件を乗り越えて保険診療下で活用できるようにするために実施する. これらの条件は厚生労働省により厳密に評価されるが, 戦略マネジメントの手法を導入することにより先進医療として適格であると判断される確率をあげることができる. また, 先進医療を実際に開始するまでには多くのプロセスがあり, 多くの関係者(ステークホルダー)が関与するが, プロジェクトマネジメントの知識とスキルを活用することにより, 適切に進められるようになる. 本稿では, 新しい医療技術が先進医療として認可されるまでのプロセスをプログラムと捉えて, プログラム・プロジェクトのマネジメントに関する考え方を導入して効率的に進める方法とそのコツについて解説する.
最前線
最前線
  • 関谷 倫子, 飯島 浩一
    2024 年 60 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    2023年9月,アルツハイマー病の根本原因であるアミロイドβ病理に直接作用する初めての疾患修飾薬として,抗アミロイドβ抗体薬のレカネマブ(商品名:レケンビ)が薬事承認され,アルツハイマー病の治療は新しいステージに進もうとしている。それと同時に,アルツハイマー病の早期診断に資するバイオマーカー開発に加え,実臨床での遺伝子診断の有用性に注目が集まっている。本稿では,前半でアルツハイマー病の原因遺伝子と遺伝的リスク因子について概説し,後半ではアルツハイマー病の最大のリスク因子であることに加えて,レカネマブの副作用の管理という点からも注目されるアポリポタンパク質E(APOE)の遺伝子多型を例に,アルツハイマー病の遺伝子検査の臨床的な意義について概説する。
最前線
最前線
  • 高木 亮
    2024 年 60 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    温度応答性培養皿は、タンパク質分解酵素を用いることなく培養細胞を培養皿表面から回収できる。このとき培養細胞が培養皿全面を敷き詰めたコンフルエントと呼ばれる状態になっていると、細胞間接着を維持した細胞をシート状に回収することができる。我々はこれを「細胞シート」と呼び慣わして再生医療への応用に向けた研究を展開し、そのいくつかは臨床応用までたどり着くことができた。本稿では再生医療について概説し、細胞シートによる再生医療の最近のトピックスについて紹介する。
最前線
最前線
承認審査の視点
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
  • 山本 佑樹
    2024 年 60 巻 3 号 p. 226-228
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    HiLung株式会社は, iPS細胞技術を活用した生体模倣性の高いオルガノイドなどの「ヒト肺細胞モデル」を世界に先駆けて事業化しているスタートアップ企業である. 動物実験の削減や動物モデルの限界が指摘される中で, こうしたヒト生体模倣システムの創薬応用は, 現在世界的な潮流になりつつある. 特に肺は多種の機能細胞による複雑な三次元構造を持ち, 呼吸運動による極めて動的な臓器で, かつそれらが疾患の病態と密接に関連しておりで, その利用価値は極めて高いと考えられる. 本稿では, 実際の活用事例を中心に, これまでの研究経緯等も含めて紹介する.
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 山城 寿樹
    2024 年 60 巻 3 号 p. 234
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    キノキサリンは多くの天然物や医薬品に骨格として含まれる芳香族複素環である.近年,N-アリールエナミンのアジド化/アミノ化反応を経由したキノキサリンの合成も報告されているが,化学量論量以上の酸化剤を要する,アジド源として高価な試薬を必要とするといった欠点があった.今回Baidyaらは,CuCl2を触媒とした,連続するアジド化/環化カスケード反応により,ごく微量の触媒存在下での効率的なキノキサリン電解合成法を報告したので,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Baidya M., De Sarkar S., Org. Lett., 25, 5896–5901(2023).
    2) Zhou K. et al., Org. Biomol. Chem., 21, 4631–4636(2023).
    3) Ma H. et al., Org. Lett., 18, 868–871 (2016).
    4) Sagar A. et al., Org. Biomol. Chem., 14, 4018–4022(2016).
  • 小早川 拓也
    2024 年 60 巻 3 号 p. 235
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,一本鎖(+)鎖RNAウイルスSARS-CoV-2を原因とし,肺炎や発熱等を引き起こす疾患である.現在までに,ワクチンや治療薬が開発されている一方で,3年半以上経った今もなお,感染が終息したとは言えない.
    SARS-CoV-2に宿主細胞が感染すると,RNAゲノムから巨大なポリタンパク質が合成される.このポリタンパク質が切断されて生成する断片が,SARS-CoV-2の増殖に必須のタンパク質として機能する.タンパク質分解酵素のメインプロテアーゼ(Mpro)およびパパイン様プロテアーゼ(PLpro)は,この切断反応を担う分子であり,抗ウイルス薬開発の重要標的である.Mproを標的とした抗ウイルス薬として,ニルマトレルビルとエンシトレルビルが臨床で使用されている.一方で,PLproに対しては,実用化に至った阻害薬はない.その理由として,PLproと生体内のヒト脱ユビキチン化酵素(DUBs)の相同性が高く,選択性を出すのが難しい点が挙げられる.しかし,Mproを標的とした抗ウイルス薬の耐性株の出現もありうるため,治療薬の選択肢を増やす観点からも,PLpro選択な阻害薬の創出が求められている.
    今回Sandersらは,SARS-CoV-2 PLproの選択的な非共有結合性阻害薬であるGRL0617を基点として,DUBsとの選択性を維持しつつ阻害能を向上させた共有結合性阻害薬7を見いだしたので本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhang L. et al., Science, 368, 409–412(2020).
    2) Owen D. R. et al., Science, 374, 1586–1593(2021).
    3) Unoh Y. et al., J. Med. Chem., 65, 6499–6512(2022).
    4) Shin D. et al., Nature, 587, 657–662(2020).
    5) Sanders B. C. et al., Nat. Commun., 14, 1733(2023).
  • 加治 拓哉
    2024 年 60 巻 3 号 p. 236
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    植物由来の生理活性天然物は重要な医薬資源の宝庫として位置付けられている.Osbournらは植物のゲノムにおいて,これら植物二次代謝物(特化代謝物)の生合成遺伝子クラスターの存在を明らかにしている.種々の植物特化代謝物の生合成経路が明らかにされてきた一方で,生合成酵素を活用した特化代謝物の生産は,その構造の複雑さから,未だ挑戦的な課題である.本稿では,シャボンノキ由来サポニンアジュバントの生合成経路の解明に関するReedらの研究について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Nützmann H. -W., Osbourn A., Curr. Opin. Biotechnol., 26, 91–99(2014).
    2) Reed J. et al., Science, 379, 1252–1264(2023).
    3) Matasci N. et al., GigaScience, 3, 17(2014).
  • 木口 裕貴
    2024 年 60 巻 3 号 p. 237
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    病原体に汚染された食品や飲料を摂取することで引き起こされる細菌性食中毒は,WHO報告書(2015年)および世界銀行報告書 (2019年)によると,世界で年間6億件発生し,死者は40万人以上,経済的損失は1,000億ドルを超える.これらの被害を抑えるには,汚染された食品を流通の初期段階で検出し,取り除くための迅速かつ高感度な病原体分析が求められる.本稿では近年注目を浴びている人工知能(artificial intelligence: AI)を活用し,顕微鏡画像から同時に複数の標的細菌を多重検出するSMART(sensing method using artificial intelligence transcoding)法を構築したFengらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) World Health Organization. Food safety; 2022. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/food-safety.
    2) Feng N. et al.,Anal. Chem., 95, 8649–8659(2023).
    3) Viswanathan S. et al., Talanta, 94, 315–319(2012).
    4) Li L. et al., Anal. Biochem., 608, 113854(2020).
  • 安西 聖敬
    2024 年 60 巻 3 号 p. 238
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    近年,細胞内特定区画(細胞小器官など)間における分子往来の重要性を示唆する報告が多数され,分子移動の追跡に対して強い興味が持たれている.その解析には,BioID法などの分子標識法や,免疫蛍光染色法が用いられているが,いずれの手法でも時間情報を欠いたスナップショット的な情報しか得られない.本稿では,2種の近位依存性標識酵素(TurboID,APEX2)を併用することでその課題を克服し,細胞内あるいは細胞間における「ある場所(出発点)からある場所(到着点)への分子移動」の網羅的追跡を実現した新手法,「Trafficking analysis by sequential incorporation of tags for identification(TransitID)」の概要とその応用例を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Qin W. et al., Cell, 186, 3307–3324(2023).
    2) Benjamin W., Pavel I., Nat. Rev. Neurosci., 20, 649-666(2019).
    3) Emre B. et al., Int. J. Mol. Sci., 22, 5736 (2021).
  • 抱 将史
    2024 年 60 巻 3 号 p. 239
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    高齢化が進む現代において,高齢者での認知症関連疾患の増加が予測され,加齢に伴う認知機能低下を抑制する治療法が模索されている.老齢マウスを用いた研究では,若齢マウスの血液の全身循環により加齢に伴う神経新生・シナプス可塑性・認知機能などの低下が抑制されることが報告されているものの,その作用をもたらす因子についてはほとんど解明されていない.本稿では,若齢血液の血小板因子が末梢免疫系を介して老齢脳に対する有益な作用をもたらすことを明らかにしたSchroerらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Villeda S. A. et al., Nat. Med., 20, 659–663(2014).
    2) Schroer A. B. et al., Nature, 620, 1071–1079(2023).
    3) Mehdipour M. et al., Aging, 12, 8790–8819(2020).
  • 真鍋 祐樹
    2024 年 60 巻 3 号 p. 240
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    フェロトーシスとは,自由鉄依存的に過剰蓄積した酸化リン脂質による非アポトーシス性プログラム細胞死である.様々な疾患との関連が明らかになりつつあり,特に,がんの新たな治療戦略として注目を集めている.抗酸化作用を有するビタミンEやその代謝物のビタミンEヒドロキノン,さらにビタミンKなどがフェロトーシスを抑制する食品成分として知られている.最近,これらに加え,ビタミンAもフェロトーシスに関わることが報告された. 化学構造からビタミンAを含むレチノイドが抗酸化作用を示すことは想像できるが,代謝変換によってフェロトーシスに対する作用強度が変化することも見いだされるなど,興味深い内容であったため本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hinman A. et al., PLoS ONE, 13, e0201369(2018).
    2) Mishima E. et al., Nature, 608, 778–783(2022).
    3) Bi G. et al., Cancer Res., 83, 2387–2404(2023).
  • 土生 康司
    2024 年 60 巻 3 号 p. 241
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    2型糖尿病は様々ながん発症・進展のリスク因子となることが疫学調査で示されていることから,糖尿病治療はがんの発症や進展の抑制につながるのではないかと考えられている.一方で,糖尿病治療薬であるピオグリタゾンは膀胱がん発生のリスクを上昇させる可能性が添付文書に示されている.では,使用が増加しているSodium-dependent glucose transporter(SGLT)2阻害薬はどうだろうか.エビデンスレベルが高いとされるメタアナリシスの報告によれば,同じSGLT2阻害薬でも,カナグリフロジンは消化器がんに対し予防的に働くが,エンパグリフロジンは膀胱がんに関するリスクが上昇する可能性が示唆されている.しかし,本研究では平均観察期間が約61週間と短く,がんの発生への影響を検出するには不十分であると考えられた.その点を解消できる報告として,過去に蓄積された膨大な臨床データを用い,SGLT2阻害薬とともに頻用されているDipeptidyl peptidase(DPP)-4阻害薬を比較対象とし,SGLT2阻害薬ががんの発症に影響を与えるか評価した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kasuga M. et al., Cancer Sci., 104, 965-976(2013).
    2) Tang H. et al., Diabetologia, 60, 1862-1872(2017).
    3) Cheuk T. C. et al., Cancer Med., 12, 12299-12315(2023).
    4) 川北恵美,金﨑啓造,医学のあゆみ,286, 769-776(2023).
追悼
  • 柴﨑 正勝
    2024 年 60 巻 3 号 p. 229
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    池上四郎先生に初めてお会いしましたのは,小生が修士課程1年の秋であったと記憶しております(1969年).私が所属していた東京大学薬学部山田研究室では,木曜セミナーという行事がありました.そのセミナーに確か濃紺の背広姿で出席され,沢山の質問をされた研究者の方がおられました.後で分かったことですが,ノーベル賞受賞者(故)H. C. Brown教授の元で博士研究員として研鑽を積まれ,帰国後放射線医学研究所で研究を開始されたばかりの池上先生でした.その池上先生との強いコネクションは,私が博士研究員としてハーバード大学のCorey研究室へ留学して数か月後に池上先生からお手紙を頂いたことが始まりです(1974年).帝京大学に薬学部が新設される予定で,そこの教授になるのでスタッフにならないかというものでした.いつ新設が認められるのか分からなかったのですが,数年先であろうと予想して,そのオファーを受けることにしました.結局帝京大学は1977年4月に新設され,講師として勤務することになりました.ただその時は研究棟が建築中であった為,1978年3月まで放射線医学研究所で帰国後の仕事を開始しました.研究テーマは池上先生が得意とする硫黄の化学とプロスタグランジン合成が融合したものでありました.1978年4月から相模湖近くの帝京大学薬学部へ移動し,1983年まで池上研究室でハードではありますが,のびのびと研究をする機会をいただきました.池上先生に論文の最終チェックをしていただき,車で相模湖郵便局へ駆けつけた事が昨日のように思い出されます.私は現在77歳ですが,未だ研究室を持って仕事をしております.その研究原点は,帝京大学薬学部池上研究室にあります.池上先生に御礼申し上げますとともに,心からご冥福をお祈り申し上げます.
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談話室
  • 松尾 由理
    2024 年 60 巻 3 号 p. 260_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり
    薬剤師になるためには、とても沢山の知識・技術が必要だ。しかし、知識だけならAIの方がずっと「正解」を答えられるだろう。「正解」とは何だろうか...
    誰もが異なる背景・意思を持つため、その患者にとっての「正解」の医療をいかに導き出すかが重要である。そこには、知識・情報を基にした考察、医療従事者との連携、そして何より、患者の心に寄り添うことが必要だ。考える力、コミュニケーション力、リーダーシップ、共感力を高める必要がある。
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