抄録
α-シヌクレイノパチーはα-シヌクレイン(α-Syn)タンパク質の凝集・蓄積を特徴とする神経変性疾患の総称であり,α-Synが神経細胞に蓄積するレビー小体病(LBD;パーキンソン病(PD)およびレビー小体型認知症(DLB))とオリゴデンドロサイトに蓄積する多系統萎縮症(MSA)に大別される.両者の臨床経過は最終的には大きく異なるが,病初期にはLBDとMSAの鑑別が難しいことも多い.また,LBDやMSA特有の臨床症状が顕在化する10~20年以上前からα-Synの蓄積が始まること,この前駆期に特有の症状の1つにレム睡眠行動障害(RBD)が存在することも分かってきた.最近我が国のOkuzumiらにより,従来プリオン病の診断に用いられてきた異常タンパク質高感度増幅法(real-time quaking-induced conversion: RT-QuIC法)と免疫沈降法(IP法)を組み合わせた血清中の異常構造α-Syn検出法が開発され,α-シヌクレイノパチーの診断や鑑別における有用性が報告されたため,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Atarashi R. et al., Nat. Med., 17, 175–178 (2011).
2) Okuzumi A. et al., Nat. Med., 29, 1448–1455(2023).
3) Yoo D. et al., Parkinsonism. Relat. Disord., 104, 99–109(2022).
4) Siderowf A. et al., Lancet Neurol., 22, 407–417(2023).
5) Sheres S et al., Nature, 621, 701–710(2023).