2024 年 60 巻 7 号 p. 673-678
近年、ヒトの腸内細菌叢が、健康と疾患を制御し得る新規ターゲットになる可能性があるとして、大きな注目を浴びている。腸内細菌叢の構成は、多様な要因によって変化するが、食事もその変動要因の1つである。腸内細菌叢は、我々の摂取した食物の一部を栄養源としてこれらを資化し、ヒトの生理機能を変化させる多様な微生物代謝物を産生する。一方、食事成分は、宿主生理機能への直接的な影響だけでなく、腸内細菌叢とその代謝物によって媒介される間接的な作用も併せ持つ。そのため、食事-腸内細菌叢-宿主間の複雑な相互作用を理解することは、個体の健康維持や疾患リスクの低下、病態軽減のための適切な食事成分の摂取につながる。
そこで、本稿では食事成分が腸内細菌叢に与える影響について述べるとともに、特定の疾患の治療法として食事がどのように応用できるかについての例を挙げたいと思う。