2020 年 52 巻 3 号 p. 107-119
本研究の目的は,うつ病に対する症状認知および援助の有効性の認知が,うつ病における援助要請および援助要請を勧める意図に与える影響を検討することである。大学生362名が,抑うつ症状の記載された事例を読んだ上,症状への認知や援助の有効性,援助要請意図,援助要請を勧める意図,統制変数として抑うつ,ソーシャルサポートを尋ねる質問に回答した。その結果,援助要請意図,援助要請を勧める意図ともに,援助の有効性が最も影響を与えていた。また,専門家への援助要請を勧める意図に対しては,うつ病であるとの認識が正の影響を与えていた。さらに援助要請意図のみ,改善可能性が影響を与えていた。以上から,自身の援助要請意図と援助要請を勧める意図との間には,異なるメカニズムが存在することが示唆された。