ファルマシア
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オキシトシンは投与条件に依存して社会行動を変える
森 征慶
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2025 年 61 巻 3 号 p. 260

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抄録

オキシトシンは脳内の視床下部で合成され,下垂体後葉から血中へと分泌される.オキシトシンは子宮収縮などの末梢作用に加え,社会行動(対人コミュニケーションの促進)や信頼関係の形成などの中枢作用も有する.脳内のオキシトシン神経回路(オキシトシン系)は生後に発達するため,その機能は発達期における社会的な環境・経験の影響を強く受ける.発達期における家族や友人とのスキンシップは,オキシトシン系を活性化して成体期での適切な社会行動を可能にする一方で,虐待などの逆境的経験はオキシトシン系の活性を低下させ,自閉スペクトラム症(autism spectrum disorders: ASD)を含む様々な精神疾患のリスクとなる.

ASDは社会的コミュニケーション障害を中核症状とする神経発達障害であり,特効薬がない.そのなかで,ASD治療に対してオキシトシンの有効性が示されているため,オキシトシンに新規治療薬としての期待が集まっている.しかし,その有効性に関して否定的な研究報告もあるため,オキシトシンによる中枢への作用のさらなる解明が必須の課題である.そこで本稿では,オキシトシンと社会行動,そしてその作用変化にかかわる要因を検討したPantouliらの論文を紹介する.

なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.

1) Lim M. M., Young L. J., Horm. Behav., 50, 506-517(2006).

2) Grinevich V., Neumann I. D., Mol. Psychiatry, 26, 265-279(2021).

3) Erdozain A. M., Peñagarikano O., Front. Psychiatry, 10, 930(2020).

4) Pantouli F. et al., Neuropsychopharmacology, 49, 1934-1946(2024).

5) Liu C. et al., Behav. Brain Res., 469, 115052(2024).

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© 2025 The Pharmaceutical Society of Japan
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