Functional Food Research
Online ISSN : 2434-3048
Print ISSN : 2432-3357
総説
TRPV1リガンド・カプサイシンによる炎症性骨破壊の抑制作用
菅崎 萌富成 司松本 千穂平田 美智子稲田 全規
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2022 年 18 巻 p. 22-27

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抄録

カプサイシンは唐辛子等の辛味成分であり,熱や痛覚刺激などに関与するTRPV1(transientreceptor potential vanilloid 1)のリガンドとして知られている.これまでに血管拡張作用など様々な作用が報告されているが,カプサイシンの機能性食品としての研究報告は少ない.筆者らは,これまでにカロテノイドやフラボノイドなどの天然由来化合物が炎症性骨疾患に有効であることを見いだしてきた. まず,カプサイシンの破骨細胞分化および骨吸収への作用を検討したところ,炎症性因子であるLPSによって誘導される破骨細胞分化および骨吸収活性はカプサインによって抑制されることが明らかとなった.また,カプサイシンの受容体であるTRPV1の発現を解析したところ,破骨細胞前駆細胞であるマクロファージでは認められず,骨芽細胞で認められた.そこでカプサイシンの作用機序解析として,骨芽細胞培養系にカプサイシンを添加したところ,カプサイシンは骨芽細胞に作用することでLPS 誘導性のプロスタグランジン (prostaglandin, PG)E2産生,PGE 合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)-2 および膜型PGE合成酵素(mPGES-1)の発現を抑制し,さらに,破骨細胞分化誘導因子RANKL(receptor activator of NF-κB ligand)の発現を抑制することが示された.in vivoにおける解析では,LPS誘導性の骨破壊に対してカプサイシンが抑制作用を有することを明らかとした. 本総説では,TRPV1を活性化するバニロイドリガンド・カプサイシンの炎症性骨破壊に対する作用について,最近の知見を解説する.超高齢社会の日本において,骨の健康維持・増進は解決すべき課題となっているが,歯や骨の健康に有効な機能性成分の一つとしてカプサイシンが期待される.

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© 2022 ファンクショナルフード学会
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