抄録
日本における要支援・要介護の原因の第1位は認知症であり,健康寿命延伸のためには認知症予防が喫緊の課題である.認知症の病因論では,従来,アミロイドβ仮説が知られているが,近年では全身性の代謝異常や慢性炎症の関与も注目されている.機能性食品素材のグルコサミンに関して,抗炎症作用や神経保護作用を介した認知症予防(発症リスク低減)の働きが示唆されている.本研究では,グルコサミンサプリメント摂取と認知症発症リスクとの関連を検証したコホート研究について文献的検討を行った.まず,英国バイオバンクのデータを用いた研究では,習慣的なグルコサミン利用者は,全認知症で16%,アルツハイマー病で17%,血管性認知症で26%のリスク低下を示した.このとき,メンデルランダム化解析により因果関係も支持された.また,別の研究では,2型糖尿病患者では,グルコサミンサプリメントの摂取により,糖尿病発症後の認知症リスクが21%低下するとの結果も得られている.一方,別のコホート研究では有意な関連を認めなかったとされた.追跡期間や交絡因子調整の違いが結果の不一致に関与している可能性がある.先行研究である非臨床研究や他の疫学研究では,グルコサミンによるCRP低下,糖尿病や心血管疾患,がんなど生活習慣病リスク低減といった知見が数多く報告されている.以上のエビデンスを俯瞰するとき,グルコサミンは,関節機能改善に加えて,認知症予防を介した健康寿命延伸に資する可能性を持つ機能性食品成分として期待される.今後,ランダム化比較試験や長期縦断研究により,至適用量・安全性・費用対効果を含めた包括的検証が求められる.