繊維学会誌
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グルタミン酸-メチルL-グルタメート共重合体膜の低分子収着透過性及び膜電位に及ぼす膜調製溶媒の影響
木下 隆利滝沢 章辻田 義治
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1981 年 37 巻 11 号 p. T472-T480

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抄録

グルタミン酸-メチルグルタメート共重合体膜が,ポリ(γ-メチルL-グルタメート)膜のアルロールを用いた混合溶媒中におけるケン化反応により調製された。この際,ケン化溶媒として,メチルアルコール,イソプロピルアルコール, NaOH水溶液(2:2:1体積比)を用いた場合と,エタノール, NaOH水溶液(4:1)を用いた場合とでは,得られた共重合体膜の物性に若干の差異が生じた(前者の調製法で得た膜をiM膜,後者のそれをE膜とする)。つまり,ケン化溶媒の相違は,水蒸気,メタノール蒸気の,膜透過性や,収着量にはまったく影響を与えないが,膜電位に関してはその影響があらわれ, E膜の方が, iM膜に比べ比較的大きな値を示した。
また,エチレンジクロライド(EDC)-メチルアルコール(3:5)混合溶媒中で処理された膜(EDC処理膜と略)の腰電位の値ま, E膜に比べて低かった。さらに電子顕微鏡を用いて観察した膜表面構造は, E膜が最もなめらかであり, iM膜には数多くの細かな乱れが、そしてEDC処理膜には比較的大きな乱れが見られた。これらの結果は, E膜, iM膜, EDC処理膜の膜電位の差が,この表面構造の差に起因することを示唆した。低分子の収着透過性に処理溶媒の差に基づく影響があらわれなかったのは,おそらくこれらの膜物性が,主に膜内部の性質に律せられるためであろう。

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