繊維学会誌
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ポリスチレン結晶性薄膜の高分解能電子顕微鏡観察
辻 正樹植村 明夫小原 正義河口 昭義片山 健一Jürgen Petermann
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1986 年 42 巻 10 号 p. T580-T583

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抄録

アイソタクチック ポリスチレン(i-PS)の未延伸水面膜(非晶)を161°Cで7分間熱処理すると結晶化し,膜中で結晶ラメラがedge-onになる。この試料の高分解能電子顕微鏡像は(300)格子面に相当する0.63nmの格子縞が6nmの細い帯状の領域(一枚のラメラに相当)に現われた。この幅はラメラ結晶芯の厚さに相当するものである。170°Cで2時間熱処理した水面膜の高分解能像には(hkO)格子縞が同一領域に出現し,単結晶様の結晶フメラがflat-onで存在することが直接に示された。
溶液をホットプレ-卜上に拡がらせ,溶媒の蒸発直後強延伸して得たi-PS薄膜は典型的な繊維図形を与える。この試料の高分解能像には,延伸方向に走る(110)格子縞(1.1nm)がその方向に細長い領域に現われた。高分子溶融物からの配向結晶化過程には,いわゆるshish kebabが現われるとされているが,試料作製法を考慮すると,この格子像はそのshish結晶に相当すると考えられる。

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