福島医学雑誌
Online ISSN : 2436-7826
Print ISSN : 0016-2582
症例報告
初回治療から6年後に肺転移にて再発した子宮頸部中腎管腺癌の一例
矢澤 里穂髙橋 俊文古川 結香高梨子 篤浩飯澤 禎之武市 和之
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2023 年 73 巻 2 号 p. 37-44

詳細
抄録

要旨: 子宮頸部に発生する中腎管腺癌は中腎管の遺残組織から発生する稀な子宮頸部腫瘍である。今回,初回治療から6年経過後に肺転移にて再発した子宮頸部中腎管腺癌の一例を経験したので文献的考察を加え報告する。症例は初発時年齢69歳女性,3妊2産。腰痛を主訴に近医産婦人科を受診。子宮腫大を認め,子宮頸部細胞診は異常を認めず,子宮内膜細胞診が陽性(腺癌)のため当科紹介となった。経腟超音波断層検査で子宮頸部に4cm大の充実性腫瘤を認め,子宮鏡検査では腫瘍は頸管内に突出していた。この部位から生検したところ,中腎管腺癌が疑われた。子宮頸部中腎管腺癌の診断にて広汎子宮全摘術と両側付属器切除を施行した。術後の病理組織検査でも中腎管腺癌であることが確認され,腫瘍は子宮頸部から腟壁に及び,右傍子宮組織にも浸潤していた。進行期は子宮頸部中腎管腺癌IIB期であり,術後補助療法として同時化学放射線療法を行った。子宮頸癌手術より6年目に左肺野の病変とCA19-9の上昇を認めた。左肺上葉部分切除を行ったところ中腎管腺癌の再発であった。左肺上葉部分切除18か月後に,右肺野腫瘤の増大を認め中腎管腺癌の再々発の診断となった。これに対してCPT-11の単剤治療3コース実施したところ,右肺野の腫瘤は縮小した。現在,子宮頸癌術後108か月時点でパフォーマンスステータス0の担癌生存の状態である。子宮頸部中腎管腺癌はその発生学的な特徴より術前診断が困難であり,子宮頸部細胞診に異常を認めない場合でも,子宮頸部に充実性病変を認める場合には,本疾患の存在を念頭に置く必要がある。また,本症例のように術後6年経過しても再発する場合があり,長期間のフォローアップが必要である。

著者関連情報
© 2023 福島医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top