2017 年 15 巻 4 号 p. 173-178
【要旨】下肢末梢動脈疾患(PAD)は動脈硬化によって起こること,壊疽から感染症にもつながることから,透析患者の死亡に関わる合併症といえる.また下肢切断ともなれば病床を長期間占有することになり医療経済的にも損失となる.そこで透析専門病院として PAD の重症化予防に力を尽くすことが望まれる.まずは内科的予防の強化をし,PAD 自体の発症を予防することが重要である.患者や職員への啓発活動を展開し,PAD 予防や早期発見につなげたい.フットケアチームを構築し,スクリーニングにより早期発見できるシステムを整備することが望まれる.看護師や医師だけでなく,多職種連携できる環境を整えたい.連携病院との顔の見える連携を通じて切断の回避を図りたい.自施設の取り組みのみが突出してもバランスが悪くなるので,地域を挙げての連携を充実させることが望ましい.自施設のある北九州市は,PAD 治療に熱心な連携病院や周囲の透析施設・人的資源に恵まれ,地域連携モデルになり得ると期待している.透析専門病院は中核病院と透析クリニックとの架け橋になる役割も担い,透析患者の PAD 治療の中心的存在になれるよう尽力することが望まれる.