入会林野研究
Online ISSN : 2434-3927
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享保14年、安房国長狭郡大幡村と同郡北風原村との入会紛争
幕府評定所の入会裁判(4)
後藤 正人
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2021 年 41 巻 p. 69-72

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抄録

幕府評定所が裁許し、現千葉県鴨川市の村同士が争った入会争論では、大幡村は相手方の北風原村所持の北山へ入会慣行を有し、且つ上総国の小糸山へ入会利用料を払って入会を行っており、北風原村が大幡村から北山へ行く両村の山境に堀を切り開いて土手を作り、大幡村から小糸山に行く道筋にも堀を築いて、両山への道を塞いで入会が出来ないようにしたと訴え、北山への入会権行使に付、領主へ提出の村差出帳に入会の趣旨が書かれている事を挙げ、この二つの入会妨害の排除を訴えた。北風原村は村差出帳について争い、自村に係わる取替證文が自村に存在しない事は大幡村が偽りを述べていると主張し、大幡村の入会権を否定し、大幡村の入会を排除するために大幡村から北山と小糸山への道を塞いだという。評定所は村差出帳を吟味して確認し、更に北山の入会権を有する他の村々を呼び出して吟味し、大幡村の北山への入会権を再確認した。依って評定所は大幡村が北山で秣・柴草を採取する事を認め、成木を伐採してはならない事などを命じ、北風原村が行った二つの堀切の取払いを裁決した。この裁決に付き、両当事者は取替證文を取交し、評定所へも差し上げた。

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© 2021 本論文著者
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