2005 年 4 巻 p. 175-191
地形効果補正のひとつであるMinnaert 補正法について、地表被覆物に応じてMinnaert 定数が決まるとされているが観測シーンに応じてどの程度変動するのか比較した例はほとんどない。本研究の目的は、複数時期のリモートセンシングデータを用いて、各時点において森林タイプ間でMinnaert 定数を比較することである。同一地形条件からサンプリングされた森林タイプごとのデータからMinnaert 定数をそれぞれ算出し、有意差検定を行った。さらに、森林タイプを特定しないで、地形条件(傾斜角、斜面方位角)のみで層化無作為抽出したサンプルデータからMinnaert 定数を求め、その同一性について議論を行った。福岡市近郊にある三郡山地周辺の森林地帯を対象地とした。使用した衛星データは1997年中に観測された7シーンのSPOT/HRVデータである。同一地形条件のサンプルによって森林タイプ間のMinnaert 定数を比較した結果、いくつかのシーンで有意差は認められなかった。森林タイプを特定せずに、地形条件のみで層化無作為抽出したサンプルから得られたMinnaert 定数は、いずれの観測時期、バンドにおいても有意差が全く認められなかった。つまり、サンプルが変わっても、地形条件で層化すれば安定的なMinnaert 定数が求められることが示された。