FORMATH
Online ISSN : 2188-5729
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4 巻
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
Original Article
  • 鈴木 太七
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 1-24
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    樹幹の根元の円盤の中心を原点とする。原点から垂直に高さzまで、さらにそこから水平に半径rの樹幹表面までとった直線を、S-S折線と名付ける。S-S折線上の2点間の隔たりを、樹幹がその区間を生長するに要する時間で距離づけることにすると、樹幹表面のすべての点は、原点から等距離にある。その意味で、樹幹表面は擬似球Qである。年齢tの擬似球の方程式は

    と書かれる。ここでH, R(z) は、それぞれ樹高と高さzでの半径生長の極限、または、それぞれ樹高と半径rの生長関数の逆関数である。
    樹幹Qの一種の特性関数uを3変数t, z, r の関数として

    で定義して、樹幹のHeaviside 関数と名付けると、uは線形同次一階の偏微分方程式

    の“弱い解”となり、樹幹表面はその特性曲面となる。言い換えれば、解u = 1は樹幹表面で不連続に、u=0に飛躍する。したがって、樹幹表面は、樹幹生長に対して一種の波面前線と見做すことができる。

  • 林分蓄積の図化
    時光 博史
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 25-47
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    数式の明確さを避けることを目的に3図形□△○により林分蓄積を図化した。□は確かに在るもの、△は変化するもの、○は終わるものを表した。林分蓄積は樹冠と増加する樹幹に分かれた。幹材積の増加は単木と閉鎖林分によって説明された。このモデルの空白からは単木の消失と林分材積の上限が読み取られた。また収穫表は高齢で持続する主林木材積と増加する副林木材積に分かれた。図によると問題周辺の因子多数が仮定された明瞭な見取り図として示された。このため減少を増加と言い替えることが容易であった。結果として評価可能なよいモデルが作成された。更に数式モデルにおける急激な減少の危険を示すこともできたが、明らかにされた危険を意識して回避するためには仮定の多いモデル図は適当ではないと思われた。

  • 柳原 宏和, 吉本 敦
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 49-69
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    同一林分内において局所的な地理条件の違いなどにより、個々の林木の成長は異なる。そのような場合、それぞれの林木の成長を同様のパターンにより分類し、分類されるグループ毎に成長を予測できれば、林分全体の成長をより効率的に記述することができる。本研究では、単純同齢林の林木成長に対し、k-平均法によりクラスタリングを行い、情報量規準を基に最適なグループ分割の抽出を試みた。ここで用いた方法は、林木の成長曲線のパラメータ推定、推定されるパラメータ値に対するクラスタリング、得られるクラスターを基にした多変量分散分析(MANOVA) モデルのあてはめ、そして、あてはめ結果から得られる情報量規準による最適グループ分割の決定から構成される方法である。

  • 吉本 敦, 柳原 宏和, 能本 美穂
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 71-91
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    本研究では、動的計画法による最適林分経営モデルDP-KYSSを用いて最適間伐計画における炭素吸収量について分析を行った。分析の結果、間伐による伐採木を炭素吸収量の一部として捉えた場合、間伐・主伐による総収益の現在価値を最大化することにより得られる最適間伐計画と、計画期間内で吸収される炭素量の最大化により得られる最適間伐計画のそれぞれから算出される炭素吸収量には3%程度の差しか生じないことが分かった。この結果から、総収益の現在価値最大化による最適間伐計画の基でも十分な炭素の吸収が達成できることが期待できる。また、間伐による伐採木を炭素の排出と見なした場合、炭素吸収量だけの最大化の基では間伐を施さないことが最適な計画として導かれることが分かった。

  • 大西 文秀
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 93-108
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    近年、地球規模の環境問題に対応するために森林資源や集水域の学際研究に期待が高まり、研究成果の社会への還元が急務となりつつある。本研究では、ヒトの活動の集積と自然がもつ包容力の定量的な関係をはかることを目的として、集水域を系とした環境容量の概念を設定し、数理モデルと地理情報システム(GIS)により、3大都市圏における流域環境容量を試算した。また、集水域の階層構造や、環境要素が持つ環境性と資源性の関連や変動構造の解明を進め、学際的な流域管理モデルを試行した。環境容量の試算モデルは、CO2固定容量、クーリング容量、生活容量、水資源容量、木材資源容量の5指標を設定し、環境情報と科学知識の統合により構築した。これらの試みは新たな環境計画を支援する情報やシステム構築の一助になるものと考えられる。

  • 島崎 浩司, 田中 和博
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 109-124
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    日本の林業は採算性の低下から間伐が滞るなどの問題が生じている。木材の伐採・搬出コストのうち大部分を人件費が占めるため、現場での実労働時間の長さが採算性に大きく影響する。本研究では三重県宮川村を対象地とし、作業用車両、徒歩それぞれの移動時間についてGPS、GISによる分析を行い数理モデルを作成し、それを基に各林地における実労働時間を推定した。さらに、推定した実労働時間を基に一定量の間伐材を搬出する場合のコストの推定を試みた。

  • 川田 伸治, 松村 直人
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 125-134
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    林業経営の低迷により、間伐などの育林作業に遅れが目立ってきている。日本の森林管理を従来の木材生産機能中心から、主要な機能を決定し適切に配置する方法が考えられる。三重県では、「生産林」と「環境林」に区分したゾーニングを実施し、森林整備の遅れている「環境林」について、森林環境創造事業が行われている。森林環境創造事業は、100%公費による、間伐を中心とした施業を行い公益的機能の向上を目指している。本研究では、三重県美杉村を対象地に、公共性と公益的機能発揮のために30ha以上という事業実施条件に対してGISを用いて三重県型森林ゾーニング、所有者数、小班面積を考慮して森林環境創造事業の対象地を抽出し、今後の課題について考察した。

  • 近藤 洋史, 池田 浩一, 小泉 透, 村上 拓彦, 吉田 茂二郎
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 135-146
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    kriging補間法を応用して、ニホンジカ生息密度の空間的分布の予測を行った。研究対象地は福岡県英彦山周辺地域のニホンジカ生息区域である。生息密度調査は1999年11月から2000年3月にかけて糞粒法によって実施されたものである。生息密度調査箇所の位置情報に生息密度情報を組み合わせてデータベースを作成した。生息密度調査箇所位置は対象地に離散的に分布していた。このデータベースに対して、kriging補間法を用いて、生息密度が連続しているデータの集合に変換した。この連続データ集合をもとに、研究対象地のニホンジカ生息密度分布の予測を示した。この結果、ニホンジカの生息分布を視覚的に把握できるようになったと思われる。さらにニホンジカの集中して生息している箇所の空間分布など、シカ生息密度の分布範囲も把握することが可能になったと考えられる。

  • 中間財を含む多数国多数財比較生産費モデルによる考察
    江尻 陽三郎
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 147-173
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    日本および米国の各部門の生産額を変数とし、両国の林業が提供する外部経済効果を勘案したGDPの合計額を目的関数とする線形計画問題を考え、この目的関数を最大化するような各国の生産特化パターンはどのようなものになるのか、考察した。最初に、2国2財比較生産費モデルと線形計画問題との対応関係について考察した。次いで、この対応関係を手がかりに、中間財を含む多数国多数財の比較生産費問題を、線形計画法の問題として簡潔に定式化した。さらに、各国の林業が提供する外部経済効果を内部化すべく、目的関数を修正した。最後に、日米2国の21財についての経済データを用いてこの線形計画問題を実際に作成し、望ましい国際特化パターンを算出した。考察の結果、現在の日本および米国の林業が提供する外部経済効果をそれぞれ、数千億~数十兆(円/年)なる範囲内の適当な値に見積もるならば、その見積額のもとでは、日本は林業の自給率の向上を図り、米国はそれを抑制することが望ましい。等の結論が得られた。

  • 村上 拓彦
    原稿種別: 研究論文
    2005 年4 巻 p. 175-191
    発行日: 2005年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    地形効果補正のひとつであるMinnaert 補正法について、地表被覆物に応じてMinnaert 定数が決まるとされているが観測シーンに応じてどの程度変動するのか比較した例はほとんどない。本研究の目的は、複数時期のリモートセンシングデータを用いて、各時点において森林タイプ間でMinnaert 定数を比較することである。同一地形条件からサンプリングされた森林タイプごとのデータからMinnaert 定数をそれぞれ算出し、有意差検定を行った。さらに、森林タイプを特定しないで、地形条件(傾斜角、斜面方位角)のみで層化無作為抽出したサンプルデータからMinnaert 定数を求め、その同一性について議論を行った。福岡市近郊にある三郡山地周辺の森林地帯を対象地とした。使用した衛星データは1997年中に観測された7シーンのSPOT/HRVデータである。同一地形条件のサンプルによって森林タイプ間のMinnaert 定数を比較した結果、いくつかのシーンで有意差は認められなかった。森林タイプを特定せずに、地形条件のみで層化無作為抽出したサンプルから得られたMinnaert 定数は、いずれの観測時期、バンドにおいても有意差が全く認められなかった。つまり、サンプルが変わっても、地形条件で層化すれば安定的なMinnaert 定数が求められることが示された。

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