本研究は,高校生物を中心として,理科教育の行動目標,学習指導方法,評価方法の適正なあり方,および現在の学校の教育条件の中で簡便で確実な情報収集,分析,利用の方法を創出しようとして行った実践的研究である。行動目標の設定にあたっては,まず,戦後の生物教育の変遷を考察し,一般に行われている高校生物を確認し,次に,都道府県教育課程全国集会の報告書の基本概念とそのとらえ方を分析,かつ,生物学的側面から考察して,高校生物でとりあげるべき基本概念を明らかにした。この基本概念とその下位概念,および被験者の学校の教育条件にもとづき現行の高校生物 Iの内容全体にわたる行動目標を設定した。学習指導は次のように行った。まず,行動目標にもとづきプリテストを作成,このプリテスト実施後,作業学習を行う。作業学習の中心教材は行動目標達成を目ざすワークシートで,このワークシートを完成すればポストテストが通過できる。データ収集だけについてみても, 2年間,計9学級,プリ,ポストテスト計40回,被験者総数延7,500名になる。このため,その処理は電算機によって行った。電算機によってアウトプットされたものは毎回,全生徒に関する個人解答記録,正解個数, 100点満点,平均,同標準偏差,得点分布,同%,移動%分布,評価指数,有効度指数,各単位・小単元問題別正答誤答者数別一覧表等である。作業学習に必要な資料として生物 Iの内容を精選,整理した教科書様テキストを作成してあり,ワークシートと合わせて使用し,生徒が自主学習できるようにした。本研究では通常の学校の教育条件の中で年間を通して実施することが研究上の重要なファクターになっている。したがって,この学習は,他の教科および教科以外の教育活動に支障なく,学校全体の教育計画における自然の流れの中で実施できること,大学入試等をひかえた生徒に無用な心理的負担をかけないことについて十分に配慮した。以上の方法で学習させながら,形成的に,被験者集団の学習目標到達度,学習効果指数の算出,各単元・小単元別到逹度,個人別学習到達度等の評価を定量的に行った。本稿は,本文の冒頭にも述べてあるように,本研究全体の概要を述べたものである。次回以後では本研究の詳細を説明しながら後期中等学校の理科教育について考察していく予定である。