日本理科教育学会研究紀要
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教材リトマスの再検討 (I) ―リトマスの簡易精製法とリトマス液の変色域の測定―
長沢 千達
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1979 年 20 巻 1 号 p. 35-42

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抄録

リトマス色素から,アゾリトミン色素を主成分とする粗製リトマス液を分離溶出する方法として,液体クロマトグラフィーを利用した簡易精製法を見出した。この方法は,装置としては不要のポリエチレンびんを活用し,カラム充填剤としてジャガイモデンプンを用いたものである。色素の展開溶出に用いる溶媒は水で十分であるが,発色の鋭敏度と腐敗防止のためには30%エチルアルコールを用いた方がよい。この方法は,使用する器具,試薬,手順のどれをとっても,これまでのリトマス精製法よりはるかに簡単であるから,教育現場でも手軽に精製できる。そして展開溶媒の濃度が一定ならば,比較的一定した変色域を持つ赤褐色の粗製リトマス液が得られる。得られた液はかなり濃いので,赤ブドウ酒の色くらいにうすめた液で十分に使用できる。実験によれば,このうすめた液による変色は図4のように弱酸一弱塩基,あるいは緩衝溶液を用いたとき,pH5.0-6.0-7.0-8.0で紅―赤紫―紫―紫青(青)に変る。強酸ではpH4.0-5.0で橙一紅(紫赤)に.また強塩基ではpH9.0-10.0-11.0で紅(紫赤)一紫一青にそれぞれ変色する。またこのうすめた液の発色の鋭敏度はJIS特級に相当するが,これらの変色域や鋭敏度の試験の結果については,用いた市販五社の製品による違いは見られなかった。この液を密栓して普通に保存しておくと黄褐色に退色するが,振りまぜるだけで再びもとの赤色にもどり,酸・塩基に対する発色も前と変りはない。このうすめた液は赤色であるが,このままで使用しても何ら差支えはなく,普通の水道水で鮮やかな紫色に,酸・塩基で紅と青に発色する。またガラス棒の先にアンモニア水をほんの少量つけてかきまぜるだけで簡単に青色にすることができるので,リトマスの赤液•青液として使うこともできる。

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© 1979 一般社団法人日本理科教育学会
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