1988 年 29 巻 1 号 p. 59-65
小学校理科における児童実験を取り入れた学習場面では、児童が計画した実験と実際に実施した実験との間に差異が生じることがしばしば見受けられる。こうした現象について実践データをもとに検討した結果、この現象の背景には次のようなことが複合的に作用していることが解明された。(1) 実験の計画は、個々の児童の直接的な自然の事物・現象とのかかわり合いの、経験の量や質によって規定される。(2) しかし、上記によって生じた実験計画段階における児童間の差異は、実験実施段階において為される児童相互のコミュニケーションや情報収集によってかなり縮小される。(3) 一方、そうした児童相互のコミュニケーションや情報収集は、児童一人ひとりの実験実施に対する意欲を高揚するとともに、実施される実験の質的、量的向上をもたらす。