日本理科教育学会研究紀要
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理科学習の基盤としての原体験の教育的意義
小林 辰至雨森 良子山田 卓三
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1992 年 33 巻 2 号 p. 53-59

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抄録

原体験を筆者らは、「生物やその他の自然物、あるいはそれらにより醸成される自然現象を触覚.嗅覚・味覚をはじめとする五官(感)を用いて知覚したもので、その後の事物・事象の認識に影響を及ぼす体験のこと」と定義している。これまでの理科教育では、動植物にさわったりにおいを嗅いだりすることそれ自体は評価の対象となっていなかった。しかし、触覚・嗅覚・味覚を伴った体験は、長期記憶として残りやすい。また、理科学習において重要視されている探究心のもとになる意欲や感性を育てることができる。原体験は、理科学習の基盤となる感性や意欲を育てるとともに、後に学習する知識と結びつき生きた知識や概念形成の基盤となるものである。今後は、理科教育の基盤としての原体験をより積極的に学習活動に取り入れることが必要である。

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© 1992 一般社団法人日本理科教育学会
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