1997 年 37 巻 3 号 p. 1-13
最近の認知科学や教育学においては,「協同的な学習」についての議論が行われてきている。しかしながら,理科教育における認知論的な研究は,子どもたちの協同的な学習にあまり焦点をあててこなかった。本研究の目的は,表現のリソースとしてコンセプトマップを使用した102名の子どもたちが行う協同的な学びにおけるインタラクションのあり方を「状況的認知論」の立場から分析することであった。それらの結果,以下の4点が指摘できた。(1) 子どもたちは,協同的な学びにおいてその意義を認め,学習に対してポジテイヴに作用する感情を抱いていた。(2) 子どもたちは,協同的な学びにおいて新たなアイデアを想起したり,相手からアイデアを取り入れたりしていた。(3) 子どもたちは,協同的な学びにおける「ずれ」を認めていた。(4) 「熟達者―初心者」ペアにおいても,対話的な学びが成立していた。分析の結果を考察することから,理科授業のあり方について有益な示唆を得ることができた。