抄録
1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)と鉄によって引き起こされるドパミン(DA)性神経障害に活性酸素が関与している.これはB型モノアミン酸化酵素(MA0-B)により1-methyl-4-phenylpyridinium cation (MPP+)に変化した後, パーキンソン病が発現するが, その病因に酸化的ストレスの関与が考えられている.MPP+は強力なDA放出促進薬の一つであり, DAの自動酸化と, スーパーオキシドアニオン(O2-)を介してヒドロキシラジカル(·OH)を生成させる作用がある.すなわち, レセルピンによりDAを枯渇させるとMPP+による·OHの産生が低下した.またアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であるイミダプリルはアンジオテンシン(II)によるDAの放出を抑制することにより, MPP+による·OHの産生を抑制した.一重項酸素(1O2)のスカベンジャーであるヒスチジンによっても·OHの産生が抑制され, MPP+により産生されるラジカル種に1O2の存在が示唆された.さらに低密度リポタンパク質(LDL)の酸化阻害薬であるフルバスタチンによって·OHの産生が抑制された.これはLDLの酸化が·OHの産生に関与していることを示している.これらの薬物はMPP+により引き起こされる活性酸素を抑制する作用を有することにより, 抗パーキンソン病薬としての応用が可能と思われる.