日本薬理学雑誌
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総説特集号 「薬の作用機序と生態機能の分子的理解に向けて」
ヒスタミンに関する研究:
ヒスチジン脱炭酸酵素の精製から欠損マウスまで
渡邉 建彦
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2001 年 118 巻 3 号 p. 159-169

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抄録

私は, 1984年にヒスタミン産生酵素であるL-ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)に対する抗体を用いた組織蛍光抗体法により中枢におけるヒスタミン神経系の局在と分布を明らかにして以来, その機能を研究してきた. その方法は, 主に(1)薬理学的にHDCの阻害剤, α-フルオロメチルヒスチジンやヒスタミンH1, H2, H3受容体作動薬と拮抗薬などを用いるものと(2)HDC, H1, H2受容体遺伝子ノックアウトマウスを用いるもので, 一部, ヒト脳でのH1受容体を介するヒスタミンの機能を検討する時は, ポジトロン·エミッション·トモグラフィー(PET)を用いた. その結果, 中枢ヒスタミン神経系は, 自発運動を促進し, 覚醒を起こすと共に, 痙攣抑制, メタンフェタミン逆耐性形成抑制, 脳虚血障害抑制, 侵害刺激に対して鋭敏化, ストレス反応抑制などに関連することが明らかとなった. これらは, ヒスタミン神経系は覚醒を維持すると共に, 種々の化学的, 物理的, 心理的侵襲に対して防御的に働くと要約することができる. 最近, われわれが作成したHDC-KOマウスを用いて, 末梢における既知のヒスタミンの作用, 例えば, 血管透過性亢進, 胃酸分泌促進などを確認すると共に, 予想外の作用にも関係することが見つかりつつある. その最も顕著な新規知見は, HDC-KOマウスの肥満細胞は, 数が少なく, 大きさが小さく, 顆粒の密度が低いことである. 多くの新規機能の発見を予感させる.

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