日本薬理学雑誌
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総説
内皮細胞依存性過分極因子(EDHF)研究の最近の進展
鈴木 光
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2003 年 121 巻 2 号 p. 85-90

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抄録
内皮細胞依存性過分極因子(EDHF)の性質や生理機能について,最近の我々の知見をまとめた.EDHFによる過分極はカリブドトキシンで抑制されるので,Intermediate Conductance Ca-activated K-channel(IKチャネル)の関与が考えられた.EDHF作用発現時には内皮細胞内Ca濃度が上昇したので,関与するIKチャネルは主に内皮細胞膜に在ると思われたが,このことは内皮細胞から直接膜電位を測定することにより確認された.摘出血管における組織内の電位分布の測定から,内皮細胞は周辺の内皮細胞や平滑筋細胞とギャップ結合により機能的に結合しており,内皮細胞―平滑筋細胞間や平滑筋細胞間に比べ内皮細胞間の電気的結合がより良く,従って内皮細胞において発生した電位変化は速やかに内皮細胞層に伝搬した後,平滑筋に伝搬することがわかった.これらの結果から,EDHFは内皮細胞の膜電位変化がギャップ結合を介して電気緊張的に平滑筋細胞に伝搬されたものであると考えた.最近報告されたいくつかのEDHF候補物質について,その可能性を考察したが,関与するKチャネルや用いられた薬物の選択性などの問題から,それらがEDHFであると断定するには至らないと思われた.EDHFに関連して,平滑筋の細胞膜過分極が筋弛緩を誘発する機構が未知であり,今後の課題であると思われる.
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© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
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