抄録
スライスパッチクランプ法が確立されて10年余が経過した.ここ数年は,透過性の高い顕微鏡の開発によりスライス深部のニューロンも同定可能になり,シナプス結合を温存した厚めのスライスを使用できるようになった.縦揺れを最小限に留めるスライサーも開発されている.これらの設備面の進歩によって,従来幼若動物に限られていた本法による中枢シナプス伝達解析が,成熟動物にも適用できるようになり,また,paired recording,樹状突起からの記録,シナプス前終末からの記録等,より発展した手法も用いられるようになった.今後は,単一シナプスの詳細な解析等の細部への応用と,in vivoのシステムに近づけるような応用との両方向への展開が期待される.