日本薬理学雑誌
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121 巻 , 3 号
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受賞者講演
  • 村木 克彦
    原稿種別: 受賞者講演
    2003 年 121 巻 3 号 p. 143-151
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/02/25
    ジャーナル フリー
    Ca透過性およびCa活性化イオンチャネル(Ca関連イオンチャネル)は,平滑筋や内皮細胞をはじめ,あらゆる細胞に発現するイオンチャネルである.Ca関連イオンチャネルは,その活性化がCa流入を引き起こすことから,またその活性化にCaを必要とすることから,細胞のCa動態と密接に関係すると予測される.種々の平滑筋細胞を用いて検討を行ったところ,平滑筋に存在する細胞膜受容体の活性化にともないイノシトール三リン酸が産生されると,Ca活性化Kチャネルの抑制とCa活性化Clチャネルの活性増強が観察された.一方,内皮細胞のCa関連イオンチャネルとCa動態の関係についても検討を加え,虚血時に細胞から遊離される細胞障害性脂質のパルミトイルカルニチンが特定の細胞膜受容体を活性化し,その結果,内皮細胞のCa動態変化と,それに引き続きCa活性化Kチャネルの活性亢進を引き起こすことを明らかにした.また内皮細胞にCa動態変化をもたらすと報告されていた脂質メディエーターのスフィンゴシン1リン酸の新規機能−Ca透過性カチオンチャネルの活性化作用−を見出した.さらに平滑筋·内皮細胞間のギャップ結合を介した平滑筋による内皮細胞の膜電位制御と,内皮のCa動態への効果を明らかにした.これらの結果は,いずれも平滑筋や内皮細胞のCa動態とCa関連イオンチャネルの密接な連関を示す証拠であり,平滑筋や内皮細胞の生理機能を理解する上で,極めて重要である.
  • 石崎 敏理
    原稿種別: 受賞者講演
    2003 年 121 巻 3 号 p. 153-162
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/02/25
    ジャーナル フリー
    低分子量GTP結合タンパク質Rhoはアクチン細胞骨格の再編成を介し,細胞運動·接着·細胞質分裂などおおくの細胞反応の調節分子として機能している.Rhoは,他のGTP結合タンパク質と同様に,刺激に応答して,活性型(GTP結合型)となり下流の分子に情報を伝達し,これら多くの細胞反応を調節している.近年,Rho標的タンパク質の同定に伴い,その細胞内情報伝達機構が明らかにされた.また,Rho標的タンパク質の1つであるRho-associated kinaseに対しては,その特異的阻害薬Y-27632の発見により,Rhoを介する情報伝達経路の生体内での機能も解明されつつある.本稿では,Rhoを介する情報伝達機構について現在の知見を紹介するとともに,細胞内情報伝達経路に関わる分子の薬物標的としての可能性について論じる.
  • 秀 和泉
    原稿種別: 受賞者講演
    2003 年 121 巻 3 号 p. 163-173
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/02/25
    ジャーナル フリー
    腫瘍壊死因子(TNF)はIL-1,IL-6と並ぶ強力な炎症性サイトカインである.最近,クローン病や関節リウマチなどの慢性炎症性疾患において抗TNF療法が著しい効果を示すことから,これらの疾患の病態形成においてTNFの果たす役割の重要性はさらに確実なものとなった.末梢組織における主要なTNF産生細胞はマクロファージであるが,マスト細胞から放出されるTNFはアレルギー性炎症反応の引き金となるとともに,細菌感染時の生体防御に主要な役割を果たす.また,中枢のTNFは主にミクログリアが産生し,炎症性組織破壊や神経変性などに密接に関わる一方,神経保護作用も発揮する.このようにTNFは悪玉·善玉の二面性を示すが,本来生体保護を担うTNFが刺激により過剰に誘導された結果,その有害作用が前面に現れるものと考えられる.従って,TNF産生·放出の制御は薬物療法のための新たな標的となりうる.しかし,TNF自体の作用については数多くの報告があるものの,TNF産生·放出の細胞内外の仕組みについてはほとんど解明されていない.本研究では,マスト細胞とミクログリアに焦点を当て,TNFの産生·放出メカニズムを検討した.まず,マスト細胞においては抗アレルギー薬がヒスタミン遊離よりも強くTNF遊離を抑制することを見出し,さらにTNFは産生されたのち放出される過程もシグナル制御を受け,この過程にはPKCαが関与する可能性を示した.一方,開口放出を制御する低分子量Gタンパク質Rho GTPase(少なくともRac)は抗原刺激からCa2+依存性PKCβI活性化を介してTNF遺伝子転写に至る初期シグナルに関与することを示した.また,脳傷害時に大量に放出されるATPがミクログリアからTNF遊離を引き起こすことを見出し,さらにこの効果にはイオンチャネル型P2X7受容体とMAPキナーゼ(ERK,JNK,p38)が重要であること,そのうちERK,JNKは遺伝子転写に関与する一方,p38はmRNAの核外輸送を制御すること,さらにP2X7受容体はイオンチャネルとは独立した機序でp38とJNKの活性化を担うことなどを明らかにした.これらの細胞特異的なTNF産生·放出メカニズムを明らかにすることから,炎症疾患のエフェクター細胞をターゲットとした新しい創薬への基礎を形成できるものと期待される.
実験技術
  • 籾山 俊彦
    原稿種別: 実験技術
    2003 年 121 巻 3 号 p. 174-180
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/02/25
    ジャーナル フリー
    スライスパッチクランプ法が確立されて10年余が経過した.ここ数年は,透過性の高い顕微鏡の開発によりスライス深部のニューロンも同定可能になり,シナプス結合を温存した厚めのスライスを使用できるようになった.縦揺れを最小限に留めるスライサーも開発されている.これらの設備面の進歩によって,従来幼若動物に限られていた本法による中枢シナプス伝達解析が,成熟動物にも適用できるようになり,また,paired recording,樹状突起からの記録,シナプス前終末からの記録等,より発展した手法も用いられるようになった.今後は,単一シナプスの詳細な解析等の細部への応用と,in vivoのシステムに近づけるような応用との両方向への展開が期待される.
  • 佐治 英郎, 飯田 靖彦
    原稿種別: 実験技術
    2003 年 121 巻 3 号 p. 181-191
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/02/25
    ジャーナル フリー
    生体は種々の生体分子が関与するネットワークによる相互作用に基づいて機能していることから,生きている状態で,生体そのものを丸ごと解析するホーリズム的解析は,生体機能およびその異常によって起こる疾患の解明,薬の作用機序の解明,薬効評価,新薬の開発などに極めて有効な情報を与える可能性がある.この生体のホーリズム的なインビボ解析に優れた方法として,核医学イメージング法がある.この方法は,物質透過性に優れるγ線放出核種で標識され,対象とする生体機能に高い親和性と特異性を有する放射性化合物を解析用プローブ(放射性機能探索分子)として用い,放出されるγ線を目印に,その体内挙動を体外から測定することによって,放射性機能探索分子が関与する生体反応を解析し,その結果を画像として視覚的に表すものである.したがって,この核医学イメージング法においては,γ線の体外計測と分布の画像解析のための核医学イメージング装置(ポジトロンCT:PET,シングルフォトンCT:SPECT)の開発,優れた放射性機能探索分子の設計,有効なデータ解析法の開発などが重要である.ここでは,神経伝達系を対象として,核医学イメージング法の概要と,その病態解析,薬物作用研究への応用例について述べる.核医学イメージング法に関する技術の開発は現在活発に行われており,本法の今後の発展が期待される.
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